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【2023年最新】SNS世代の新入社員を迎える企業が問われるリスクマネジメント【第104回ウェビナーレポート】

公開日:2023.04.19 最終更新日:2023.06.20

パネリスト

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所主席研究員。 デジタルクライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日経新聞やプレジデントへのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

パネリスト

前薗 利大(まえぞの としひろ)

一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 研究員。2011年、シエンプレ株式会社に入社。デジタル・クライシス対策の専門家として、日本を代表する大企業の炎上事案の沈静化・リスクマネジメントやブランディングなどの支援を多数担当。また、大手広告代理店との協業で、官公庁のプロジェクトなども担当。企業のWeb戦略策定や実施に携わった経験を活かし、セミナー講師や社内講師なども務める。

近年、世代を問わず広く普及しているソーシャルメディア。特に「SNS世代」にとって、ソーシャルメディアは生活に欠かせない存在となっています。一方で、社会経験が乏しい若者たちの投稿がはらむリスクは少なくなく、実際に企業に大きな損害を与えた例もあります。

今回は、従業員による不適切投稿の最新事例を取り上げながら、ソーシャルメディア利用における注意点などを詳しく解説いたしました。新入社員を迎えたこの時期に、SNS教育にお役立てください。

従業員の不適切投稿が企業の社会的価値・信用を損ねる

桑江:ソーシャルメディアの普及に伴い、従業員の不適切投稿が炎上して企業に深刻な損害を与える事例が後を絶ちません。不適切投稿の発信元がプライベートの個人アカウントだったとしても、勤務先の職場は雇用主としての責任を問われてしまうのです。その結果、公式の謝罪にまで追い込まれて自社のレピュテーションを落とすケースもどんどん増えています。

特にTwitterは複数の匿名アカウントを運用している一般人も多いのですが、「匿名だから大丈夫だろう」と油断して好き勝手な投稿を続けているうちに身元を特定されてしまうことが珍しくありません。

企業の社会的価値・信用を守り抜くためには、全ての従業員がソーシャルメディアの仕組みを理解し、不適切投稿が深刻な損害を生むことを共通認識として持っておく必要があります。

前薗:物議を醸しそうな不適切投稿に炎上の仕掛け人となるユーチューバーなどが食いついて来れば、謝罪には至らなくても何らかの対応に追われかねません。

桑江:そうですね。ユーチューバーや週刊誌記者、あるいはSNSの暴露系インフルエンサーから「事実はどうなのか?」といった問い合わせがあれば広報対応を余儀なくされるため、かなり大変な状況に陥ってしまうでしょう。

ところが、「ソーシャルネイティブ世代」の新入社員にとってSNSで発信することに特別な意識は何もありません。「そんなことまでいちいち発信する必要があるのか?」と感じるような思慮の浅い内容も、友人にメールを送る程度の感覚で投稿しがちです。

さらに、リモートワーク中は周囲にさほど厳しく管理されないため、社会人としての自覚が生まれる前にリスクが発生する可能性が高まります。

誓約書の提出やガイドライン策定でリスクを抑止

前薗:新入社員のSNS利用については、不適切投稿を抑止するための規定を設けた誓約書の提出やガイドラインの策定・運用などを通したリスクマネジメントの方法があります。しかし、プライベートな時間のソーシャルメディアの利用にどこまで介入できるのか頭を悩ませている企業も多いでしょう。

個人情報の漏洩防止に向けては、公私を問わず厳正な取り扱い方を決めているのが一般的かと思います。SNS利用のルールも同様で、広報やマーケティング、法務、コンプライアンスの各部門が積極的に関わり、全社一体となって定めるべきです。

桑江:業態などにもよるでしょうが、業務中にSNSを私的利用できる環境を許容してしまうのは基本的にNGかと思います。

また、従業員のプライベートのアカウントを含め、炎上の火種になりそうな投稿が発覚した場合のエスカレーション(業務上の上位者への報告・相談)先を設定しておくことも重要です。

前薗:シエンプレのデジタル・クライシス総合研究所がまとめた「デジタル・クライシス白書2023」によると、2022年の炎上事例(1,570件)の30%近くは一般の個人による発信がきっかけでした。炎上は決して対岸の火事、他人事ではないことを裏付けるデータです。

また、炎上の火付け役は、内部告発情報などのリーク先にもなっている著名な暴露系インフルエンサーだけではありません。不適切投稿を見て批判や拡散に加勢し、自分でも気付かないうちに炎上の仕掛け人になっているSNSユーザーも増えています。

一般人の言動にも目を光らせる炎上の仕掛け人

桑江:炎上の仕掛け人が台頭したのは、この1年間で見られた大きな変化ですね。不適切投稿がないかどうかをチェックする人たちは以前から存在しますが、より大きな影響が出る流れがつくられてしまいました。

新型コロナウイルスの感染拡大で社会的な格差や分断、対立が増幅して世の中の不寛容化が進んだことが、一般人の炎上事例が増えた要因にもなっていると思います。

前薗:ソーシャルメディア時代の情報拡散力は、アナログな口コミと比べて桁違いの強さです。著名な暴露系インフルエンサーが加担した炎上事例は、発生からわずか数時間後にマスメディアで報じられることもあります。

万一の事態に備え、企業として速やかな対応を取れるようにしておく準備は欠かせません。しかし、何よりも大切なのは、従業員に不適切な投稿をさせないようにすることです。

桑江:炎上仕掛け人のマインドとして一番多いのは「ひどい人間を懲らしめる」という自らの正義感を満たし、日頃のストレスも発散したいという動機でしょう。

前薗:自身のアカウントで不適切投稿を紹介し、注目(表示回数や「いいね」数)を集めたいというマインドは、大手回転ずしチェーン店などで今なお発生している「客テロ」動画の告発でも見受けられます。

桑江:感情的に最も強いのはリアルやSNS上でのやっかみから、その人を貶めて不幸を喜びたいというマインドですね。

いずれにしても、不適切投稿が炎上仕掛け人に見つかってしまえば瞬く間に広がります。自分の会社だけではなく、家族にも大きな迷惑を掛けてしまうでしょう。

投稿してはいけない情報のパターンは2つ

前薗:投稿してはいけないのは「漏洩してはいけない情報」「発信してはいけない情報」の2つのパターンに分類されます。

前者は個人情報や機密情報などが該当し、これらが漏洩してしまえば企業の管理責任が問われるのは避けられません。場合によっては民事・刑事の両面で処分を受けてしまう可能性もあります。自社であればどんな情報が該当するのかを一人ひとりがよく考えることが、一番のリスクマネジメントにつながるはずです。

また、後者はハラスメントを連想させる情報や誹謗中傷、差別発言、犯罪の告白などが該当し、場合によっては刑事責任を問われることにならないとも限りません。もちろん、サービスクオリティに疑問・不安を持たれる投稿内容もタブーです。

ソーシャルメディア上では、個人の発言が際限なく広がってしまう恐れがあります。周りを意識していない「独り言」「ヒソヒソ話」のつもりだとしても、街なかで拡声器を使って話しているのと何ら変わらないという意識を持つことが最も重要です。

企業としては、拡声器で触れ回ったとしても問題のない内容かどうかを投稿前にしっかりチェックできるようにしなければなりません。

桑江:従業員がプライベートで運用しているSNSアカウントの設定を見直してみることも重要です。Facebook投稿の公開範囲が、意図しないうちに「全員」「友達の友達」になっている可能性もあります。

また、TwitterやInstagram、TikTokなどのアカウントを匿名にしていても、本人の名前や会社名で検索したときに情報が出てこないかを確認するべきです。匿名であっても、電話番号からアカウントを検索できる設定になっているかもしれません。

さらに、公開設定した写真・投稿文に個人名や会社名を判別できる素材が含まれていないかどうかを確認することも大事です。

継続的な社内研修による意識啓発が重要に

前薗:2022年の法改正によってSNS上などで他人を誹謗中傷した加害者の特定が容易になり、侮辱罪の罰則も強化されました。事象によってはリツイートや「いいね」を押すだけでも誹謗中傷をしたと捉えられてしまう場合もあるため、ことさら注意が必要です。

誰かを傷つけるつもりなどなく、何の気なしに発信した投稿が会社はおろか、自身の人生に大きなダメージを与えてしまう可能性もあります。そうしたリスクをしっかりと認識した上でSNSを楽しく活用できるようにするためには、新入社員をはじめとする従業員への適切な社内研修の実施がますます欠かせなくなっていると言えるでしょう。

桑江:社内研修は、炎上リスクをいかに「自分事」と思わせられるかがポイントです。また、炎上事例のトレンドは刻一刻と移り変わっているので、どんなに優れた研修も一度実施すれば安心できるということにはなりません。

シエンプレの社内研修・教育サービスには、従業員向けに導入できるeラーニングの仕組みも整っています。私や前薗がリアルな講座で直接お話をさせていただくことも可能なので、従業員のリテラシー向上に関するご相談などがありましたら、ぜひお寄せください。

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