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ステマ規制元年 しかし、止まらぬ「サクラ問題」(デジタル・クライシス白書-2023年6月度-)【第108回ウェビナーレポート】

公開日:2023.07.05 最終更新日:2023.12.05

パネリスト

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所主席研究員。 デジタル・クライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日本経済新聞や雑誌『プレジデント』など出版物への寄稿を担当したりしている。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

パネリスト

前薗 利大(まえぞの としひろ)

一般社団法人デジタル・クライシス総合研究所 研究員。2011年、シエンプレ株式会社に入社。デジタル・クライシス対策の専門家として、日本を代表する大企業の炎上事案の沈静化・リスクマネジメントやブランディングなどの支援を多数担当。また、大手広告代理店との協業で、官公庁のプロジェクトなども担当。企業のWeb戦略策定や実施に携わった経験を活かし、セミナー講師や社内講師なども務める。

※当記事は「Twitter」当時の内容となります。

今回は「ステマ規制元年 しかし、止まらぬ『サクラ問題』」をテーマに、ネット上における「サクラ」行為の違法性を考察しました。異物混入や情報漏洩、ハラスメントなどの炎上事例も振り返っています。

学生向けオンラインセミナーで社員が質問

桑江:最初のテーマは、今回のサブテーマでもある「サクラ問題」です。
ある暴露系インフルエンサーが独自のタレコミとして、大手広告・人材会社のA社が就職活動に関するオンラインセミナーで「サクラ」行為をしているという内部告発をTwitterに投稿しました。
A社はその後、セミナーで社員が学生を装って「オンラインのイベントは出入り自由ですか?」「イベントには私服で参加しても良いですか?」といった質問を繰り返していたことを明らかにし、「不誠実な行為であった」と謝罪しています。
また、A社の事案を受けて自社の状況を調査した広告・人材業界大手のB社も、学生向けオンラインセミナーで同様の行為をしていたことを明らかにしました。こちらもまた、メディアが報じたのとほぼ同時に公式サイトでの謝罪に追い込まれています。

前薗:一連の問題は「レピュテーション」「法律・法令」「ステマ規制」の3つの軸で考える必要があります。
こうした質問で呼び水効果を狙うことはあり得ますが、「法律・法令」上の焦点となるのはイベントの運営企業側が周知していたかどうかです。周知していなかったとすれば、コストを負担して出展している企業に「サクラ」の質問に答えさせたことが余分なコストや時間を使わせることになったと受け止められる可能性があります。
また、「ステマ規制」で言えば、今回のような「サクラ」行為をステマとみなすかがポイントになるでしょう。
ECサイトのレビューやGoogleマップの口コミを社員に書かせていたわけではなかったとしても、第三者を偽って表示をしたという意味では「ステマ規制」の対象になり得るかと思います。

桑江:今後は3つの軸に照らし合わせ、問題になりそうな部分をしっかりとケアしなければなりませんね。

前薗:インターネット上でも「この程度の行為で問題になるのか」という声が見受けられます。しかし、「レピュテーション」の観点では世間がこうした問題に対して厳しい目を注いでいるということを押さえておく必要があると思います。

顧客を装った社員が口コミ投稿

桑江:中古車販売大手のC社をめぐっては、顧客を装った社員の書き込みによる口コミサイトの「サクラ」行為疑惑が浮上しました。
元社員によると、Googleマップなどの口コミの平均点が低い販売店は本部の環境整備点検で低い評価をされる傾向があり、評価結果はスタッフの給与にも影響するようです。

前薗:こうした「サクラ」行為が組織ぐるみで行われている場合、ステマ規制に明確に抵触します。間接的な指示・命令だったとしても規制の対象になりかねません。
Googleのレギュレーションに違反するというリスクも背負っているプロモーション活動であることを認識すべきです。

前代未聞の異物混入事案を収束させた謝罪対応とは?

桑江:続いてのテーマは「食品衛生」です。うどんチェーン大手D社の新商品を食べた顧客が、容器の底に生きたカエルが混入していたことをTwitterで報告しました。
ところが、当初のユーザーの反応で目立ったのは「嘘だろう」と疑う声です。企業に対する批判より投稿内容への疑問を呈する動きが活発化したのは、従来の異物混入事案と違う現象だったように感じます。

前薗:そのような疑義が生じたのは、「生きたカエル」という異物のインパクトがあまりにも強かったからかもしれませんね。まさか、そんな物が混入するわけがないと思われたのでしょう。

桑江:Twitter上は騒然となりましたが、D社の謝罪対応はしっかりしていたと思います。投稿が拡散した翌日に1回目の謝罪をし、さらに翌日に行った2回目の謝罪では関連商品の販売中止を発表。再発防止を誓うとともに、製造工程もきちんと開示しました。

前薗:1回目の謝罪をしたのは事案発生から2日後のことで、特に早かったわけではありません。それでも強く非難されなかったのは、検品体制の強化や一部商品の販売休止など消費者が知りたい情報をある程度網羅したリリースを発出できたのが大きかったと思います。
その上で2回目の謝罪をした結果、事態はポジティブな論調が目立つ状態のまま推移しました。リリース対応で論調をコントロールできるということを学べる一例です。

大手芸能事務所の性加害問題はCM企業にも飛び火

桑江:次は「ハラスメント」です。大手芸能事務所のE社で発覚した性加害問題を巡り、同社タレントをCMに起用している企業の商品の不買を呼びかける活動が一部で始まりました。該当する企業一覧のPDFなどもネット上で公開されています。
また、Twitter上では「不買宣言」のハッシュタグとともに、スポンサー企業からの回答をシェアするツイートが投稿されている状況です。
一方、性被害を訴えた元タレントには誹謗中傷が寄せられ、別の元所属タレントについてはフェイクニュースが拡散されました。今回の問題はまだまだ沈静化しておらず、E社のタレントに関連する企業は新たな展開も注視しながら今後の動きを確認しておく必要があるでしょう。

前薗:E社に対しては擁護と非難の両極端に振れた強硬な意見が存在します。どちらに転んだとしても、関係企業は何らかのリスクを背負わなければならないでしょう。
新規で契約する場合も含め、キャスティングをされている企業は世論の行方をしっかりとウォッチしなければならないでしょう。

情報漏洩に隠蔽疑惑 問われるSNSリテラシー

桑江:次は「情報漏洩」です。あるTwitterユーザーが、日本を代表するクリエイター本人が署名したとみられるレシート画像を自身の個人アカウントに投稿しました。
クリエイターはこのユーザーがアルバイトをしているガソリンスタンドで給油をしたようで、Twitterでは乗っていた車のメーカーも明かされています。
このような行為が問題になったケースは本ウェビナーでも幾度となく取り上げていますが、またしても起こってしまいました。

前薗:新人研修などでは、情報漏洩を防ぐための教育を必ず行わなければなりません。

桑江:桑江:福岡県の専門学校で開かれたバーベキュー大会で大やけどを負った学生が亡くなった事故は、世の中に大きな衝撃を与えました。
この事故では「安全管理」がクローズアップされていますが、テレビ番組の取材では事故現場にいた学生が教員との面談で「動画をSNSに流さないように」など証拠隠滅とも取られかねない言葉を投げ掛けられたことも明らかになっています。SNSでは事実を隠そうとしてもリークされるため、隠し通すことはできません。

前薗:相手に不誠実と感じられて当事者間で解決できない問題は、SNSに上がりやすい傾向があります。事態の収束に当たる際は、不誠実という印象を与えない対応が求められると思います。

「寿司テロ」客に6700万円の損害賠償請求

桑江:「今月のトピックス」です。回転寿司チェーン大手F社の店内で、しょうゆ差しを舐めるなどの迷惑行為を働いた客の動画がSNS上に掲載された問題の続報です。この客に対し、同社が6700万円余りの損害賠償を求める訴えを起こしていたことが分かりました。
社内研修などでしっかりと取り上げられるべき事案かと思いますが、当事者の顛末がどうなったかもきちんと伝えることで、不適切投稿の抑止につながるはずです。

前薗:実際に6700万円の賠償命令が出たわけではないのですが、SNS上では誤解しているケースも見受けられます。社内研修などで間違った結果を伝えてしまうと誤った方向に導くことになりかねませんので、慎重な事実確認が必要です。

Googleマップの口コミ詐欺に要注意!

桑江:さて、先ほど触れたGoogleマップの口コミについても、注意すべき事案が発生しています。「低評価を改変できる」と営業電話をかけてきた業者の誘いを断った青森県の飲食店に対し、さらに多くの低評価の口コミが投稿されたという被害がSNS上で報告されました。
Googleマップは非常に重要ですが、そもそも「点数を上げる投稿をする」という提案自体が違法です。そのような業者の誘いには、絶対に乗らないようにしてください。

前薗:そうですね。悪質な業者の摘発が増えるのではないかと思いますが、このような誘いに乗って依頼した側もペナルティーを受けることがあるので気を付けなければなりません。

桑江:軽い気持ちで依頼しただけなのに、Googleマップに自店が掲載されなくなるということも起こり得ます。
フランチャイズを展開している場合は加盟店が勝手に依頼してしまうリスクも考えられるため、本部として明確な対応を決めておくべきですね。

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