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SNS論調分析の方法~リアルタイム危険度チェックから、将来的なリスク診断まで~【第69回ウェビナーレポート】

公開日:2021.10.20 最終更新日:2023.06.20

パネリスト

桑江 令(くわえ りょう)

シエンプレ株式会社 主任コンサルタント 兼 シエンプレ デジタル・クライシス総合研究所 主席研究員。 デジタルクライシス対策の専門家として、NHKのテレビ番組に出演したり、出版社でのコラム、日経新聞やプレジデントへのコメント寄稿も担当。一般社団法人テレコムサービス協会 サービス倫理委員も務める。

話題となっているトレンドワードを知る

桑江:私たちデジタル・クライシス総合研究所は「世の中の炎上トレンド」「話題のトピック」から、リスクを察知しています。
SNSの論調を分析するに当たっては、自社のものを含めたさまざまなツールを使い、AIによるクラスター分析を実施。設定したキーワードで発生した炎上のクラスターから、話題のトピックやリスクとなる要素を調査する方法を取っています。
それにより、直近で起こった炎上のテーマにはどのようなものがあるのか、そこから導き出される次のリスクは何かを常に確認していて、必要であれば弊社がサポートしている企業様に情報提供もしているところです。

ソーシャルリスニングツール「Netbase(ネットベース)」の分析機能を利用したSNS投稿の動向を見てみると、8、9月は東京五輪・パラリンピックや自民党総裁選など大きなテーマに偏っていました。
直近1カ月間の炎上キーワードはバラバラでしたが、世の中で話題となっているトレンドを知ることで、類似の事案が起きる可能性や同じ業界内における炎上の「飛び火」などのリスクの察知、予防につなげられます。
このような分析をする際は、トレンドワードと「炎上」「批判」などのキーワードを組み合わせて調べるのが効果的です。注目されている炎上事例を調査し、炎上の理由や対応について把握しておくと自社の炎上予防にも役立ちます。
どんな話題が盛り上がり、どんな方向性の議論がされているのかを踏まえ、自社に関連する要素の有無を確かめることが求められるでしょう。

「#拡散希望」などのハッシュタグにも注意

我々は「炎上」というキーワードを含むツイートの「ハッシュタグ調査」を盛んに実施していて、年1回公表しているデジタル・クライシス白書でも、よく使われているハッシュタグの言葉を提示しています。
2021年も前年と同様の傾向が見られますが、最も注意しなければいけないのは「 #拡散希望」「 #炎上」「 #匿名質問募集中」などのハッシュタグです。
自社に関するリスク投稿があった場合、このようなハッシュタグがついて発信されてしまうと多くの人の目に触れる可能性が高まるので、リスク度を高く見積もる必要があるでしょう。
実際に、「 #拡散希望」というハッシュタグの投稿をウォッチしている人は結構います。問題を告発するために立ち上げたばかりの新しいアカウントに対し、テレビのワイドショー番組の公式アカウントから早々と「取材をさせてください」というリプライが寄せられたケースもあります。
自社に関するリスク投稿は、これらのハッシュタグの有無で大きく変わってくると言えるでしょう。

また、「炎上」というキーワードでの「Netbase」のスコアはあくまでもSNS、Twitter内のトレンドですが、インターネット上の検索トレンドに関してはGoogleトレンドなどでチェックするのがオーソドックスな方法かと思います。
「Netbase」は有料ツールなので、契約しなければ利用できませんが、無料で使えるツールもあります。有料ツールより精度は劣るものの、いろいろなツールを使い分けることで自社でも活用できるのではないでしょうか。

例えば、「Trend Calendar(トレンド・カレンダー)」というサイトでは2017年から現在までのTwitterトレンドとGoogleトレンドのランキングを見られますし、現在のトレンドワードもリアルタイムで把握できます。いずれも無料のツールなので、単なるトレンド調査のみということにはなりますが、世の中の流行を知るには適しているでしょう。
そのように最新のトレンドを認識した上で、Twitterの「高度な検索」などで炎上リスクにつながる投稿がないかを調べていく方法もあるかと思います。
他にも、ネットニュースで「炎上」と検索し、話題になっている炎上事例を知ることも可能です。数週間に1回の頻度でチェックすれば役立つ情報を発見できるはずですが、実際には炎上していない話題を「炎上した」と騒ぎ立てる、いわゆる非実在型炎上の記事もヒットしてしまいますので、くれぐれもご注意ください。
もちろん、一番いいのは、デジタル・クライシス総合研究所の月刊炎上レポートを見ていただき、資料をストックしていただくことかと思います。

炎上対策は「全量データ」のモニタリングが基本

われわれは、さまざまな業界のお客様を支援しているほか、リアルタイムでも炎上事例を収集し、他社の炎上事例からリスクを察知しているところです。
これらの事例を他山の石にしているのですが、直近1年間も広告などのクリエイティブ炎上の山はいくつもあります。
「広告AND炎上」のキーワードで調べると、炎上の理由や経緯を把握できます。例えば、「広告」を「不動産」「車」「結婚式」「旅行」など自社の業種や商品に置き換えて調べていけば、そうした山が見えてくるはずです。
もちろん、書き込まれている内容がすべて正しいとは限りません。フェイクニュースや釣り投稿が含まれている場合もあるので、それらの真偽は自分で見極めなければなりませんが、少なくともSNS上で何が話題になっているかというのは確認できます。
SNSの動向を追っていけばネガティブな反応だけでなく、評判が良い同業他社のクリエイティブも分かるでしょう。

リスクがあるテーマの調査方法としては、「投稿の全量データ」かつ「これからのツイート投稿」をモニタリングすることが重要です。ただし、自社製品などの認知度が高くて1カ月間に何万件もの投稿がある場合は、モニタリングで1件の問題投稿を見落とした場合のリスクがどれほどのものかを考えるべきでしょう。
要するに、費用対効果を見極めるということです。問題投稿を発見できなかったとしても、それが拡散されなければリスクにはならないわけです。
自社に関する投稿が拡散されない状態なら、わざわざ全量データをモニタリングしなくてもいいということになります。
時間軸としてそれでOKということであれば、全量データではなくサンプリングデータを取得するだけでいいでしょう。反対に、例え1件でもできるだけ早く火種を発見したいのであれば、全量データのモニタリングを選ばなければならないということかと思います。
SNS上でリスク投稿が見つかった場合は、当該アカウントのフォロワー数と通常投稿のアクション数、ハッシュタグの利用状況、絡んでいる他アカウントなどの情報から影響度を判断します。
アカウント属性の分析に使えるのが「Whotwi(フーツイ)」という無料ツールです。日常的なやり取りやメンションをしていることの多い他アカウントを調べることができます。

問題投稿のアカウントが持つ影響力も注視

注目されているハッシュタグや検索されそうなキーワードが入ってしまっていると、多くの人の目に留まる可能性と拡散リスクが高まりますので、自社に関するリスク投稿にそのようなキーワードが含まれていないか、さらに「#拡散希望」など何らかの意図を持った言葉が含まれていないかを注視していく必要があります。
「#拡散希望」がついている場合は、投稿したユーザーが特定の会社やサービスについて「けしからん」と思っているわけです。「私のクレーム、批判を多くの人に知ってほしい」という意図を持った投稿なので、それ自体が拡散しなかったとしても投稿者は次の手を打ってくるかもしれません。
ハッシュタグをどう使っているかは、そのユーザー自身の怒りの大きさや思いを知る上で大きなポイントになります。

問題投稿の影響度が高ければ、拡散されたりネットニュースなどに転載されたりするリスクも高まるので、何らかの対応をする準備が必要になるでしょう。
極端に言えば、フォロワー数が10人だけの個人アカウントが、独り言や愚痴のような形で商品などを批判したとしても、その投稿自体のリスクはかなり低いわけです。
投稿した本人の影響力もほぼ皆無なので、何らかの形で他人に拡散されたり、マスコミなどに取り上げられたりする可能性もかなり低いということになります。
逆に、フォロワー数が100万人いるアカウントで「#拡散希望」がついているとなると、かなりの影響力があるので、多くの人の目に触れてしまい、ネットニュースなどが記事にする可能性も高まります。

起用するインフルエンサーなどの投稿チェックを

クリエイティブリスクを診断する上では、直近の炎上事例と理由、どうすれば良かったのかを知っておくことが重要です。
最近増えているインフルエンサーやタレント起用の炎上リスクを防ぐための対策としては、本人のTwitterやInstagram、ブログなどの投稿文をチェックしていきます。
われわれのクリエイティブリスク診断サービスは「人種」「格差社会」「ジェンダー」「ステルスマーケティング」「コンプライアンス違反」など約70項目について、リスクがないかどうかを確認する仕組みです。
TikTokやInstagramなどでの動画投稿も同様で、攻撃性が垣間見られる言動がないかどうか、撮影してはいけない場所に立ち入っていないか、あるいは非公開情報を出してしまっていないかなど、将来的なリスクになりそうな項目を細かくチェックします。

過去の雑誌記事やテレビ番組などがネット上でアーカイブ化されている現在は、5年前、10年前の不祥事が掘り起こされ、炎上に結び付けられてしまう可能性も否めません。
ただし、実際にどうなるかは、その出来事がすでに解決しているかどうかがポイントになります。その上で、現在の論調がどうなっているのかを見ていくとリスク度の高さが見えてくるので、そのあたりで判断することになるでしょう。

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