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レポート:【第85回ウェビナー】デジタル・クライシス白書-2022年5月度-

2022.06.01 最終更新日:2022.06.10

新商品をリークするTwitterアカウントが出現

桑江:まずは「迷惑行為」による炎上事例です。
ファストフード大手のA社が4月21日に発表した「ご当地コラボスイーツ」など新商品の情報を事前にリークしていたとみられるTwitterアカウントが波紋を広げました。
A社は「従業員によるものか調査中」としたものの、その翌日には「思ったよりも炎上しちゃったから消します」という書き込みを残してアカウントが削除されたのです。
これまでも新商品などの情報がアクシデントのような形で漏れたケースはありましたが、リーク自体を意図したアカウントが出現したのはかなり珍しいと思います。

前薗:リークのカルチャーが成熟してきていると感じますね。
キャンペーンなどを展開したり新商品を発表したりするときは、どのようにリークと向き合うかをリスクシナリオや危機管理対応のガイドラインに落とし込んでいくべきでしょう。
また、仮に情報漏洩が確認されたときにどう処分するかなどについては、日常的な啓発も含めて取り組んでいただく必要があると思います。

桑江:企業のSNSアカウントでは、いわゆるティザー的な手法で新商品の発売を告知してコミュニケーションを取るケースが結構ありますし、クイズの正解者に賞品をプレゼントする形のキャンペーンも増えています。
そのような場合にリークが生まれる可能性がありますので、社内教育や誓約書の取り扱いなどを整理しておくべきでしょう。

前薗:リークは起こるものだと思っていただいた方がいいですね。

従業員がライバル店で迷惑行為、対応遅れで騒動に

桑江:弁当・惣菜チェーンのB社は5月5日、自社の従業員がライバル店で商品破損を伴う迷惑行為を働いたとして謝罪しました。
ただ、事件があったのは2月のことです。ライバル店側はB社に事実確認と再発防止の約束を求めていたのですが、B社は「従業員が業務時間外に起こした事件なので一切関知しない」という回答でした。
そのため、ライバル店側はnoteに詳細な経緯を投稿して対応のひどさを訴え、最終的にはB社に内容証明郵便も送って謝罪を取り付けました。
このように水面下の交渉で納得できる答えを得られなかった場合、インターネット上で何らかの発信をして世の中に問うというのもリークに近いと思いますが、こうしたことが実際に起こっています。

前薗:企業側の対応について言えば、どこまでいっても所属従業員の不始末であることを前提としていただきたいですね。
業務時間外の行動には関与したくないと思いますが、昨今の炎上傾向を見るとどうしても「どこの会社に所属する誰」という見方をされてしまいます。
その結果、企業側には何らかのアクションが求められますので、それを念頭に置いて広報・リスク対応をしないと炎上はなかなか収まらないでしょう。

2017年の映画に「児童虐待」の批判、監督が謝罪

桑江:続いては「虐待・暴力行為」の炎上事例です。2017年の映画のメイキング映像で〝子役虐待〟の演出が問題視されたC監督が、Instagramで謝罪文を発表しました。
映画の公開から5年も経った今になってTwitterで拡散して問題視されたのですが、過去のコンテンツが現在の公序良俗の物差しで糾弾されるケースは結構出てきています。
さらに、この映画のようにリリースの時期が明確であればまだいいのですが、はっきりしていなければ過去の発信と気付かれないまま批判を浴びてしまいかねません。
企業においても定期的に自社のコンテンツを見返し、最新の常識と照らし合わせて問題がないかをチェックしてください。
「危険だ」と判断すれば取り下げるのが無難ですが、それができない場合は制作した年月日を表示しておくと最低限のリスク回避にはなるでしょう。

前薗:炎上の連続性という観点で言えば、最近は映画界・芸能界でハラスメント行為が相次いでいることに世間が厳しい目を注いでいます。
このような場合、多くのSNSユーザーは同様の問題に関わる続報を見つけたくなるものです。
その動機が正義感なのか承認欲求なのかは分かりませんが、世の中で起きている炎上を自分事として捉え、チェックを欠かさないようにしていただく必要があると思います。

コーチの暴行シーン拡散で生徒が謝罪した動画に波紋

桑江:熊本県のD高校サッカー部で男性コーチが部員に暴行している動画がSNSで拡散された事案では、生徒11人が実名と顔を出した前代未聞の謝罪動画がアップされました。
監督はテレビの情報番組に出演した際、「アップされてから聞いた」と弁明していましたが、学校側の調査で自ら撮影に関わっていたことが判明し、さらに批判が強まっています。
暴行動画もそうですが、今や学生もスマートフォンで証拠を握れる時代です。
企業においても、事実をもみ消そうとしたことが明るみに出るとブランドを毀損してしまうため、広報・危機管理の面では当事者のどんな証言をどこまで信じるかが重要なポイントになるでしょう。
いろいろな角度から情報を収集した上で、対応を決めるべきだと思います。

前薗:組織においては「問題を知らない人には教えたくない」という防衛本能が働いてしまうため、追跡調査が不十分な状態で事態の収束を図ろうとするケースが多いですね。
ただ、「事実はそうではない」というのは裏アカウントなどでリークされ始めるので、早い段階で膿を出し切って対外的に発表した方がいいと思います。

ゲーム配信中に「障がい者差別」発言

桑江:「差別関連」の失言が引き起こした炎上事例もありました。プロeスポーツチームで人気を誇るD選手がゲームの配信中に障がい者を差別するような発言をしたとして、所属チームが公式サイトなどで謝罪しました。
その発言に驚いた他の選手は本人に注意喚起し、ネット上でも「差別だ」という指摘が相次ぎましたが、今年に入って何人ものプロゲーマーやネット発タレントが同じような問題を起こしています。
このチームも選手たちに研修を受けさせただろうと思いますが、通り一遍の啓蒙には限界があると感じるのも確かです。
スポンサードしようとしている選手やタレントがいる場合は、過去の言動をウォッチすることが自社のリスク回避になると思います。

前薗:こちらも炎上の連続性に関わる事例で、大切なのは世間の関心が強い問題をどれだけ意識できるかということだと思います。
世の中で起きている炎上を自分、自社に置き換えるとどうなるのかという観点で捉えていただきたいですね。

「外国籍」だとして採用説明会の参加を拒否

桑江:牛丼チェーン大手のE社は採用説明会への参加を予約した大学生が外国籍であると勝手に判断し、参加を拒否したことで批判されました。
E社は3、4月にも幹部の不適切な言動で炎上する事態が続き、今回も「またか」という目で見られてしまったことから、炎上の連続性が如実に表れたと言えるでしょう。
3、4月の事案がなかったとしても採用説明会の対応は非難されたでしょうが、ここまで大きな騒動にはなっていなかった可能性があります。
炎上によりいったんイメージが悪くなってしまった企業は、その後の振る舞いにかなり注意を払わなければならないということです。

前薗:おっしゃる通り、まさに炎上の連続性が当てはまる事例ですね。
4月の炎上以降、E社は「差別をする会社ではないか」と勘繰られましたが、またしてもジャンルが一致する炎上事例が明るみに出てしまったと思います。
企業の皆さんも、学歴差別や性差別を伴う採用活動などをしていなかったかを改めて顧みておくと安心なのではないでしょうか。

金銭トラブル続出で入社辞退も強要?

桑江:続いては「不誠実な対応」による炎上事例です。
給与支払いや解約返金遅れの金銭トラブルが続出していた脱毛サロンのF社が、内定者に対して「入社するかどうかを3時間で決めてほしい」と連絡をしたことが分かり、「鬼畜過ぎる」といった声が上がりました。

前薗:経営状況の厳しさを考えると、このような連絡をせざるを得なかったのだろうと思いますが、世の中に流出してしまったのは当然のことでしょう。
物議を醸す話題を「社内だけで収めよう」という考えは通用しづらいという前提を押さえておいていただければと思います。

大学パンフに「美女・美男図鑑」、教職員は「品性疑う」

桑江:次は「ルッキズム」に関する炎上事例です。
G大学のパフレットで紹介された在学生の「美女図鑑・美男図鑑」に対し、大学内の教職員組合が「品性を疑う」とツイートして話題になり、SNS上の意見は賛否両論に分かれています。
「美」という言葉を使う際はかなり気を付けなければならなくなってきていて、下着メーカーやアパレルメーカーもさまざまな体形のモデルを起用するようになりました。
一部の大学はすでにミス・ミスターコンテストを廃止していますので、地域や企業が主催しているイベントの行方も注視する必要があると思います。

前薗:「美人」のコンテンツがバズりやすかったのは10年くらい前の話であって、今はリスクの方が大きいですね。
現状は止めるという選択をするか、きちんとした定義を説明するしかないと思います。

芸能人の訃報報道、行き過ぎた取材に批判殺到

桑江:「その他」の炎上事例としては、お笑いトリオのメンバーの訃報を取り上げた朝のテレビ情報番組の行き過ぎた取材に批判が殺到しました。
番組では死因などの詳細な内容に触れつつ本人の自宅マンション前から生中継を行い、キャスターが「引き続き近隣の方にお話をうかがいたいと思います」とコメントする場面もありましたが、いずれも世界保健機関(WHO)の自殺報道ガイドラインに反します。

前薗:SNSなどでマスコミに対してアンチの声を上げているインフルエンサーの方々もいらっしゃるので、ルールを逸脱した報道などを見て気分を害した方々も声を上げやすくなっています。
つまり、インフルエンサーの方々の苦言に賛同することで、一般の方々も自らの不快感を露わにできるというわけです。報道機関の関係者は、そうした仕組みを理解しておいた方が炎上リスクを下げられると思います。

桑江:その場で番組の報道姿勢に疑問を呈したコメンテーターは評価されたのですが、生放送の雰囲気に流された発言をするコメンテーターがいたとしたら批判されたでしょう。
つまり、ワイドショー番組などで積極的に発言をしている有名人は、何がきっかけで批判される側に回ってしまうか分からないリスクがあるわけです。
クリエイティブなどに起用している人物がバッシングの対象となった場合、自社に飛び火するかもしれないということは頭の片隅に置いておいた方がいいと思います。

前薗:万一の場合、生活者は企業が「物言うスポンサー」としての役割を果たすことに期待しているということも、特に広報・宣伝担当の方はご理解していただいた方がいいですね。

「月給100万円しかない」発言の国会議員に集中砲火

桑江:炎上事例の最後は、与党のベテラン代議士であるH氏の「毎月もらう歳費は100万円しかない」という発言です。
同僚議員のパーティーでのあいさつが外に向かって大々的に報じられたのもポイントですが、新型コロナウイルスの影響で収入に関する格差、分断が起きている中でこのような発言をすれば批判されてしまうということは意識しておかなければならないと思います。

前薗:H氏はセクハラ疑惑でも炎上しています。一度話題になると過去の不適切な言動も次々に掘り起こされるという、まさに炎上の連続性を表している事象ですね。
コロナ禍で生活困窮者や格差の増大が叫ばれている中で月給が「100万円しかない」と発言したのは、やはり不適切だったと思います。

法務省の「ネット中傷」削除要請、3割は応じられず

桑江:さて、今月のトピックスとしては、法務省が2019年1月から2021年10月までに削除を要請したネット上の誹謗中傷(1,173件)のうち、約3割(355件)が全く削除されなかったことが分かりました。
そもそもプロバイダ側は削除要請への対応に多くの人員を割いているわけではなく、大量に起こされている訴えを裁き切れないという現象が起こっている気もします。
ただ、これから発信者情報の開示などがスピーディーにできるようになれば、状況は改善していくのではないでしょうか。

前薗:表現の自由の問題もある中、ネット上では削除要請にどこまで応じるべきかが議論されていますので、どのように進展するかを見守っていきたいですね。

桑江:各媒体が削除要請に応じる確率は、10年前より今の方が減っていると感じています。申請内容をかなり吟味するようになったように思いますが、議論が深まって削除の根拠が明確になれば、より良くなるでしょう。

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