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企業を狙う「炎上仕掛け人」の存在。顕在化する炎上の再燃リスク(デジタル・クライシス白書-2022年10月度-)【第94回ウェビナーレポート】

2022.11.16 最終更新日:2022.12.22

暴露系インフルエンサーが老舗社長の恫喝動画を拡散

桑江:「経営者の不祥事」による炎上事案です。
和菓子を製造・販売する老舗会社の社長A氏が起こしたとみられる交通事故の動画が9月26日にSNS上で拡散され、波紋が広がりました。
公開されたのは、被害者の車のドライブレコーダーが録画していた映像で、信号無視のような形で突っ込んできた赤い高級車が被害者の車と衝突する様子でした。その後、高級車から降りてきた男性が被害者を恫喝する様子が映っています。
「炎上仕掛け人」として知られる暴露系インフルエンサーのB氏がTwitterに投稿したことで大きく拡散され、この会社は翌27日に公式ホームページで謝罪しました。
事故が発生したのは1カ月余りも前の8月24日で、すでに示談に至っていたことも分かっています。
しかし、B氏をはじめとする一部のTwitterユーザーは、謝罪後も「A氏がSEO業者を雇ってインターネット検索のサジェストから事故関連のキーワードを消す“火消し工作”を行っている」などと告発。結局、会社は動画投稿から3日後の9月29日にA氏の社長辞任を発表しました。
今回の事案は「炎上仕掛け人」が関与したことで、これほどまでの騒動になったとも言えるでしょう。

前薗:B氏が引用した元動画は、9月9日からSNS上に存在していました。
数十件程度しか拡散しなかったのでほとんど知られていませんでしたが、強い発信力のあるインフルエンサーが取り上げたことで一気に注目されたわけです。
広報、マーケティングの担当者など企業の皆さんは「話題になっていないから大丈夫」と決め付けてしまわないようにしてください。

桑江:企業としては、インナーコミュニケーションの大切さも認識するべきでしょう。

前薗:インフルエンサーの標的になることも、インシデント発生時のリスクシナリオに加えておかなければなりませんね。

桑江:SNSに投稿した過去の動画や記事が発見され、炎上したケースは数多くあります。
ただ、今回のように元動画には火がつかなかった上、示談も済んで解決したはずの事故が掘り起こされて炎上してしまったのは、やはりインフルエンサーの影響力が大きかったからだという気がします。

前薗:ある出来事が物議を醸すと「実はこんなこともあった」という情報を寄せるSNSユーザーが少なくないということも、しっかり覚えておいていただきたいですね。

桑江:回転寿司チェーン大手C社の社長がライバルチェーンの営業秘密を不正に持ち出した疑いで警視庁に逮捕された事件に関しても、B氏がツイートしています。
ツイートではC社の事件の記事を転載しただけでなく、回転寿司チェーン業界の大手各社が過去に起こした醜聞を思い出させるキーワードを並べ、炎上を飛び火させました。

前薗:そうですね。

週刊誌のリーク記事も炎上の火種になる

桑江:週刊誌も「炎上の仕掛け人」になることがあります。
冷凍宅配弁当を製造・販売する大阪市のベンチャー企業D社の取締役が、社内チャットで「デブの人は採用しないようにしましょう」と発言していたことが週刊誌の取材で分かりました。
取材に対し、D社は不適切な発言と認め、この取締役は報酬の一部返上を申し出たのですが、この事案からは今や誰もがリークできる時代だということが分かります。
インフルエンサーによる暴露も含め、コンプライアンスに反する言動は社内の出来事であってもリークされるという流れが続くのではないでしょうか。

前薗:週刊誌は第2報、第3報も用意してから、第1報を放っているのだと思います。
自社の不祥事などが報じられた場合、第2報、第3報でどんなことを持ち出される恐れがあるのかを考えておかなければなりません。

桑江:続報のネタを隠し持っている取材相手に「例えば、こんな不適切なことはしていませんよね?」と何気なく聞かれた場合、調べもせず安易に否定するのは危険です。
「取材では否定していたのに、実態はこうだった」と、より批判的に報じられてしまうことになりかねません。

前薗:第1報への対応が終わったからと気を抜くと、炎上が続いてしまうリスクが高まると思います。

炎上後に明暗を分けた対応の違いとは?

桑江:続いては「SNS運用」が原因となった炎上事案です。
大手化学メーカーE社が「国際カミングアウトデー」(10月11日)に合わせて自社製品を宣伝するハッシュタグ付きのツイートを投稿し、公式アカウントで謝罪しました。
「国際カミングアウトデー」は本来、LGBTQなどの性的マイノリティであることを表明しようとする人たちを支援し、認知を高めることを目的とした記念日です。
翌朝、B氏がTwitterで取り上げたことで批判が強まったのですが、E社はB氏の投稿から30分も経たないうちに謝罪文をツイートしたことで1万件近くの「いいね」を集めました。
B氏の書き込みが広がっていた中でも、迅速な対応を取ったことでポジティブな反応に転じたのだと思います。
この事案はネットメディアで記事化されましたが、その時点で適切な謝罪をしていたのも好意的に受け止められた要因でしょう。

前薗:企業のSNS担当者は「前年の投稿は大丈夫だったので今年も」と考えがちですが、ジェンダー問題やLGBTQなどに対する世の中の理解は日に日に深まっています。
時代の流れをしっかりキャッチアップできていないと失敗してしまいやすいので、「今年の投稿は大丈夫か?」という観点でのチェックを忘れないようにしていただきたいですね。

桑江:「国際カミングアウトデー」に関しては、宅配寿司チェーン大手F社も自社商品の宣伝ツイートを公式アカウントで投稿し、翌日に謝罪しています。
ところが、「ご不快な思いをさせてしまったことを心からお詫び申し上げます」という謝罪文に対し、「何に対して謝っているのか明確にしていない」などの批判が続出しました。
公式アカウントに掲載された謝罪文が代替テキスト(ALT)だったことも、「検索されてヒットするのを避けるため」といった疑念を集めてしまった要因です。
また、近畿地方の自衛隊地方協力本部もマスコットキャラクターの発言という形で軽率な内容の便乗ツイートを投稿し、謝罪文を公表しました。
しかし、その文面にも「誤解を招くような投稿をしてしまい申し訳ありませんでした」という表現があり、F社と同様の批判を浴びています。

前薗:いわゆる「ご不快構文」「誤解構文」「迷惑構文」を全く使ってはいけないということはないと思います。
どれだけの方々の溜飲を、どんな目的で下げるのかということによっては、それらの構文を使って事態を収めるのが無難なケースもあり得るでしょう。
ただ、F社などの場合は、誰にどんな不快な思いをさせてしまい、その原因は何だったのかということまで言い切ってしまう方が良かった気がします。

桑江:ちなみに、自衛隊地方協力本部のツイートの投稿時刻は午前7時でした。
できるだけ露出度を高めようと予約投稿をしたようですが、早朝の時刻だと選択したハッシュタグに関する今年の論調がどうなるか分からないという怖さがあります。

前薗:自らの投稿に対して想定される盛り上がりとリスクのバランスを、よく見極めなければなりませんね。

謝罪対応に求められるのは真摯な姿勢とスピード

桑江:次は「クリエイティブ」が招いた炎上事例です。
カタログ通販大手G社は、ナチス・ドイツに関する本を手にした女性モデルの写真が掲載されたカタログ2誌の自主回収を表明しました。
写真に「わくわくする本が見つかった」というキャプションが添えられていたのも問題視された点です。
イタリア語で書かれた本なので、撮影時は内容に気付かなかったのかもしれません。
写真のメインである素材やキャプションの対象には、十分な注意を払わなければならないということですね。

前薗:カメラの画角や写真のカラーバランスなどを考慮し、たまたまその本を選んだのだろうというのは容易に想像できます。
ただ、インフルエンサーを含むネットユーザーは「この本は大丈夫なのか?」という視点で粗を探そうとするわけです。

桑江:この事案もB氏が取り上げたことで騒動になったのですが、そもそもの発端はG社が会員向けのメールで謝罪したことでした。
謝罪しなければ会員以外に広まらなかったかもしれませんが、何の対応もしないと「やり過ごすつもりか」とバッシングされる可能性があります。
結果的にどちらが良かったのかは分からないので、こうしたケースはそれぞれの状況などを踏まえて対応を検討するのが望ましいでしょう。

前薗:今回の事案を、自社のクリエイティブ制作におけるルール改善の一助にしていただければ幸いですね。

桑江:「クリエイティブ」に関しては、11月末に発売を予定していた女性アーティストH氏のオフィシャルリミックスアルバムに付属する関連グッズのデザインが、東京都が制定した「ヘルプマーク」や日本赤十字社の「赤十字支援マーク」に酷似しているという批判を招きました。
レコード会社はチェックが不十分だったことを認めて謝罪し、グッズのデザイン変更とアルバムの発売延期を表明しています。
しかし、H氏本人は何もコメントしていません。関連グッズへの批判とともに、「なぜ黙っているのか?」と疑問視する声がくすぶっています。

前薗:謝罪やコメントをしていないという新たなノイズが生じてしまうと、その対応もしなければならなくなります。
説明責任を果たしていないと非難された企業は何を言ってもマイナスのイメージしか持ってもらえなくなるので、対応の姿勢とスピードについては指摘を受けないようにすることが重要ですね。

アフィリエイト広告やステマにつきまとう炎上リスク

桑江:住宅関連会社のネット広告に無断かつ誤解を招く形で自宅の写真を使われた被害者が、SNS上で怒りの告発をした炎上事案も発生しています。
問題の写真はアフィリエイター広告の制作者が写真素材の販売サイトで購入したのですが、焦点になったのは責任の所在です。
注文住宅の比較サイトを運営する広告主のI社も、写真素材を販売したJ社もお詫びしたのですが、それぞれの謝罪文に記されていた「そんな写真だとは思わなかった」という趣旨の釈明が「責任転嫁ではないか」と捉えられてしまいました。

前薗:今回の場合、どこまで自社の責任として謝罪するべきなのかを見極めるのは非常に難しいと思います。
だからこそ、謝罪するポイントを絞り込んだ上で「このようなミスをこう是正します」という構文に徹し、自社の責任を認めて謝罪し切るべきでした。

桑江:そもそも、この広告が「おとり」のようなものだったのが問題です。
その点についてしっかり謝罪していれば、事後の印象が変わった気がします。
企業が広告主になる場合、アフィリエイト広告やステルスマーケティングなどのリスクをコントロールできる相手にしか出稿しないという判断も求められるでしょう。

前薗:この広告の表現は、かなり悪質ですね。
Instagramなどの広告をチェックしていると、未だにステマが横行しています。
広告を発注する側は、代理店などに順守してもらうべきガイドラインを整備しなければなりません。

炎上を繰り返すことで貼られる最悪のレッテル

桑江:続いての炎上事案は「店舗管理」関連です。
ピザチェーン大手K社の店舗が、注文を受けたピザのサイズを間違えたため再配達したピザの写真がTwitter上で拡散されて話題になりました。
作り直したピザには山盛りの青唐辛子がトッピングされていて、注文した投稿者は「嫌がらせ?」と投稿しています。
この事案もB氏がTwitterで取り上げた後、K社が公式アカウントで謝罪しました。

前薗:店舗スタッフが、どういうつもりでこのようなトッピングをしたのかは分かりません。
ただ、店舗ビジネスを展開している企業は特に、顧客とのやり取りはすべてSNSに上がってしまうということをアルバイトにも理解させることが必要です。
また、SNS上などで自社のネガティブな話題が取り沙汰されている場合、キャンペーン告知や通常の投稿はストップしなければなりません。
「緊張感に欠けている」という印象を持たれると、本来対応しなければならないこと以外の問題を指摘されてしまう可能性が高まります。

桑江:回転寿司チェーン大手L社は、メバチマグロを使用しているはずの「まぐろ」「漬けマグロ」のメニューに、より仕入れ値が安いキハダマグロを使っていたと明らかにしました。
L社は景品表示法違反(おとり広告)などの不祥事で何度も炎上を繰り返していたため、「またか」という批判が多く寄せられたのは当然の成り行きでしょう。
その一方、今回の事案に対する消費者の反発が以前より弱まったようにも感じるのは、「この程度の企業でしかない」というレッテルを貼られてしまったからだと思います。
メディアにも「またか」というトーンで報じられており、最悪なレッテルの印象がさらに強まったと言えるでしょう。

前薗:売上や利益という目の前の課題も大事ですが、中・長期的に見た自社のイメージは分けて考える必要があると思います。
問題が起きたときはブランドイメージがどれだけ傷ついたのかを調査した上で対処しなければ、重大なインシデントが再発したときに取り返しがつかなくなってしまうかもしれません。

不始末への対応が良くても晒されることがある

桑江:ファミリーレストランチェーン大手M社の店舗で提供されたポテトにゴキブリの足が混入していたとする写真がTwitterに投稿され、拡散しました。
ただ、投稿者自身は「店員の対応はとても親切で、投稿は内輪ネタのつもりだった」として自身の軽率な投稿を謝罪し、ツイートを削除しています。

前薗:どんな企業も、インシデントの発生には備えておかなければなりません。
どこかで炎上事案が発生すると、同様のトラブルが掘り返されて再燃することもあります。過去にインシデントを起こした企業は、他社の炎上に巻き込まれてしまう可能性があるので注意が必要です。

桑江:SNS上には、企業などの不始末を意図的に拡散しようとする人ばかりがいるわけではありません。ただ、内輪ネタとして晒してしまう人もいるということですね。
飲食店にとって異物混入はどうしても防ぎ切れないインシデントですが、事後対応の中身が明暗を分けると思います。

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