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ネットの黎明期(2ちゃんねる)からソーシャルメディアの混迷期まで、ソーシャルリスク事件簿で振り返るリスクの変遷とは?【第95回ウェビナーレポート】

2022.11.23 最終更新日:2022.12.22

匿名掲示板からSNSに移った誹謗中傷

桑江:パソコン通信に始まったインターネット普及の初期はPHS、携帯電話によるテキストの送受信が中心でした。その後、携帯電話が多機能化し、ブロードバンドの急速な普及もあって動画や画像、音楽などが使われるようになりました。
スマートフォンが行き渡った現在はパソコンからモバイル端末への移行が進み、SNSが浸透したという流れですね。

田淵:私自身、1999年に開設された匿名掲示板「2ちゃんねる」のユーザー、いわゆる「2ちゃんねらー」でした。

桑江:今も「2ちゃんねる」「5ちゃんねる」を見ていますが、当時と比べて投稿数は激減しました。やはりTwitterの投稿数に圧倒されている気がします。
ただ、Twitterに書き込まれている内容は「トイレの落書き」と揶揄された「2ちゃんねる」の投稿と同じような印象になりつつありますよね。

田淵:「2ちゃんねる」の登場で匿名の投稿による誹謗中傷が相当な社会問題になりましたが、それがSNSに代表されるソーシャルメディアでの誹謗中傷にもつながっていると思います。

不正アクセスは高度なサイバーアタックへと変化

桑江:ではここで、過去の「ソーシャルメディア事件簿」を振り返ってみましょう。
田淵さんが編集に協力された「ソーシャルメディア絶対安全マニュアル」(2013年、西村博之著)から抜粋した事件簿を、現在の状況に置き換えて考察してみたいと思います。
1つ目は、2012年の暮れから2013年夏にかけて大手サービスのアカウント乗っ取りとログイン情報流出が続発した出来事です。

田淵:不正アクセスと情報漏洩が社会問題になった時期でした。大手サービスで個人情報などの流出が起きていたので着目したのを覚えています。

桑江:この1、2年は、さらに高度な技術を使ったサイバーアタックが続いていますね。サービスのアカウントだけでなく企業そのものへの直接的な攻撃も増えているので、引き続きリスクになっていると思います。

田淵:より巧妙になっていますよね。情報セキュリティー上の大きな問題になっていると思います。

ソーシャルメディアを使ったストーカー殺人が起きていた!

桑江:2012年11月には、犯人がソーシャルメディアを「活用」したストーカー殺人事件も発生しました。

田淵:ソーシャルメディアをベースとした初めての殺人事件でしたね。ソーシャルメディアはSNSが代表的ですが、広い意味ではQ&Aサイトも当てはまります。
犯人はQ&Aサイトに複数のアカウントで約400件も投稿し、被害者の住所を割り出す方法を聞き出していました。
ソーシャルメディアでいろいろな手段を駆使すれば対象の人間にたどり着くことが容易にできる時代になったということですが、それは今にも通じていると思います。
ソーシャルメディアの使い方、使われ方は情報リテラシーという言葉で片付けられるほど軽いものではないということを覚えておいていただきたいですね。

桑江:ネットユーザー同士のコミュニケーションはポジティブな面もありますが、このような形にもなり得ると思います。
最近は本人が発信したさまざまな情報を基に身元などが割り出されてしまいますし、匿名アカウントの投稿も特定されるので気を付けなければなりません。

田淵:まさにその通りです。匿名で投稿したからといって匿名であり続けられるはずがないということが、今やはっきりしてきています。
「匿名掲示板への投稿だから大丈夫だ」と思い込んでいるユーザーも未だにいますが、確実に正体がばれてしまいますね。

SNSが有名人スキャンダルの新たな震源に

桑江:本人のTwitter投稿が発端となったケースとしては、プライベート写真を流出させた女性アイドルグループのメンバーが脱退する騒ぎがありました。2012年の出来事ですが、このような事案は今も変わらず続発している印象です。

田淵:芸能人のスキャンダルはパパラッチによって発覚するのが一般的でしたが、このケースでは恋人との写真が「鍵付き」の非公開アカウントから流出しました。
これ以降も非公開の投稿が流出する出来事が相次いだので、「鍵付き」が安全ではないということを知っていただきたくて事件簿で取り上げたということです。
限られた人しか閲覧できないようにしたとしても、投稿はコピーペーストできてしまいます。企業も従業員への教育を通し、しっかりと危険性を伝えなければならないでしょう。

桑江:次は、人気JリーガーがFacebookで猥褻動画を「シェア」したと騒がれた2012年のトラブルです。
実は、この選手が本当に問題の動画を再生したのかどうかは定かではありません。
当時はFacebook上に透明なボタンを仕込んでおき、ユーザーに意図せず押させる「クリックジャッキング」が横行していました。

田淵:この選手は被害者とも言えますよね。当時は特定のコンテンツのどこにでも「いいね!」ボタンを設置できましたので。

桑江:SNSでは一時、スパム的なメッセージが送られてくることがよくありました。今はプラットフォームの事業者が厳しく制限しているので、かなり改善されたかと思います。
とは言え、企業のSNS公式アカウントにスパムが届いた場合、対応を誤ると大変なことになりかねないので気を付けなければなりません。

田淵:スパム的なメッセージはいまだに来ますが、そういう現象がどうして起きるのかということについても自身で考えてみることが大事ですね。

桑江:2005年には、mixiの日記に有名なセキュリティーエンジニアの名前を騙った投稿が勝手にアップされる事態が起こっています。
それと同時に「ウイルスに気をつけてください!」という書き込みがチェーンメッセージ化してユーザーの間で飛び交いました。

田淵:今で言うフェイクニュースの走りですね。根拠のない発信で企業が被害に遭うケースの草分けだったと思います。
注意を呼び掛けたメッセージは善意で転載したユーザーが多かったのですが、結果的にチェーンメッセージになってしまいました。こうしたこともまた、今でも起きています。

不適切投稿はなぜ無くならないのか?

桑江:企業が被害者になったケースでは、Twitter上で暴言を吐いた大学生に対し、大手百貨店が内定を取り消す判断を下しました。2011年のことでしたが、この学生を内定させていたことが分かった百貨店に抗議が殺到したのが理由ですね。

田淵:10年以上も前の事件ですが、不適切投稿が引き起こしたトラブルは今もいろいろな形で起きています。例えば、Instagramのストーリーズではバイトテロ動画などが次々と炎上しました。
SNS利用に関するアルバイト従業員らへの研修は単に炎上事例を紹介するだけでは足りません。「この人はこういうことを書き込んでこうなった。あなたもそうなり得る」と具体的に伝えることが必要です。
また、どんな文章、文脈の投稿をしたら名誉棄損罪や侮辱罪、業務妨害罪などに当たるのかという法的なコンプライアンスも書き込み事例と併せて理解させなければなりません。
残念ながら、そこまで徹底している企業はなかなかないと思いますが。

桑江:同じ年には、一流ホテルのアルバイト従業員が個人のTwitterアカウントで、有名アスリートと人気モデルのカップルの来店と宿泊予定をツイートして炎上しています。
2019年に頻発したバイトテロもそうですが、この種の不適切投稿は本当に何度も繰り返されている気がしますね。

田淵:人間には誰かに何か教えてあげたいという本能的な欲求があり、ホテル従業員の不適切投稿の後は多くの企業も相当気を付けるようになったと思います。
また、この不適切投稿をめぐっては投稿者本人の身元がわずか4、5時間で暴かれてしまったのも特徴的でした。私もウォッチャーの1人として時系列を追っていましたが、相当な数の「2ちゃんねらー」の動員がありました。
匿名で書き込んだからといっても身元がばれないわけではないということを証明した象徴的なケースですね。

桑江:2011年の東日本大震災の直後には、大手レンタルショップのフランチャイズ加盟店が公式Twitterで「テレビは地震ばっかでつまらない、そんなあなた、ご来店お待ちしています!」と書き込んで非難が集中しました。
非常時における企業の公式アカウントの失敗例として有名な投稿ですが、コロナ禍の初期はいわゆる「自粛警察」「不謹慎狩り」の告発投稿が頻発したのも記憶に新しいところです。

田淵:時宜を得ていない不用意な投稿が大きな問題に発展した事例として取り上げたのですが、この文章自体が何か大きな間違いを犯したわけではないと思います。
ただ、その時々の社会の空気を踏まえた上で投稿文を作らないと、このような事態に陥るということですね。

撲滅するのは難しいTwitter「なりすまし」被害

桑江:2011年には、上場企業取締役の実名Twitterが他人の「なりすまし」だったという事件も発生しています。

田淵:「なりすまし」のアカウントに経営者として非常識なツイートが多数見つかって非難され、取締役本人が所属する企業の公式サイトまで炎上してしまったのですが、企業側の対応は早かったと思います。

桑江:Twitter社を買収したイーロン・マスク氏は、「なりすまし」のアカウントは永久に凍結するというメッセージを出しています。
ただ、企業がSNSでキャンペーンを展開すると必ず「なりすまし」が現れ、本物のアカウントだと思って参加を申し込んだ人にメッセージを送り付けるといった詐欺が発生します。
そのようなリスクはこれからもなくならないと思いますので、自社の屋号や社名、役員名などのエゴサーチを怠らず、しっかりとチェックする必要があるでしょう。

田淵:問題に巻き込まれたときには、すぐに公式サイトなどで抗弁を立てていくことが非常に大事です。

ステマに手を出した企業のダメージは増している

桑江:そして、2012年は芸能界の「ステルスマーケティング汚染」が問題になりました。最近は露骨なステマは見受けられませんが、よく考えてみるとステマではないかと思える投稿はたびたび指摘されています。

田淵:ソーシャルメディアのガイドラインではステマを禁止しているので、企業の皆さんにもよく理解していただいた方がいいと思います。
時代が変わり、ステマに手を出した企業が被るダメージは大きくなっているということを知っておいていただきたいですね。



田淵 義朗(たぶち よしろう)氏
ソーシャルメディアリスク研究所代表。宝島社(JICC)、GAGA(初代出版部長)、コーエーでゲーミング学会の設立準備を担当。1990年ゲームの国際会議(立命館大学)を成功させる。1993年(株)ジンコーポレーション代表取締役。1997年に開発発表した作品が第2回Award優秀作品賞受賞(社団法人デジタルメディア協会)。1999年SR研究所の前身となるネット情報セキュリティ研究会を設立。ネットでの誹謗中傷や風評被害に苦しむ企業と個人を数多く救済する。現在はSNSを中心とするソーシャルメディアの活用とリスク、情報セキュリティ、個人情報保護に関して、社員教育・調査コンサルティング、ネットニュースサイトの運営などを行っている。NHK『アサイチ』、フジTV『スーパーニュース』、文化放送等でコメントや出演、新聞や雑誌でのコメント多数。

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