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元大学特任准教授の差別発言問題から考える、デジタル・クライシスへの事前対策について

公開日:2020.07.01 最終更新日:2023.05.31

※この記事は雑誌『美楽』2020年7月号の掲載内容を一部修正の上、転載しております。

2020年1月15日、ツイッターに特定の国籍や民族への差別的な内容を投稿したことなどを理由に、A大学は大学院の特任准教授B氏を懲戒解雇処分としたと発表しました。

B氏は2019年11月20日に自身のツイッターに「C社(※1)は中国人は採用しない」などと投稿。ネット上では「人権侵害」と批判が殺到し、中国メディアでも報道される事態となっていました。

これを受け、B氏が所属するA大学大学院や出資元企業C社は「誠に遺憾」とコメント。25日にはその他の出資元企業3社もB氏のA大学講座への寄付中止を発表。B氏の所属大学や出資元企業は、今回の差別的発言はあくまでもB氏個人の見解であり「我々とは一切無関係である」という姿勢を明らかにしました。
加えて大学側は「断固として差別と闘う」というメッセージを26日に学府長名義で学環・学府の全学生に向けて送っていたことも明らかにしました。

この状況を受け、12月1日にはB氏も謝罪。しかし、その後も「A大学は今私に行っている迫害を客観的に見た方がいい」「A大学は中国のスパイに侵略されつつある」などの内容をSNSに投稿し続けたのです。今回の懲戒解雇処分はやむを得ない措置だったといえます。

ただし、デジタル・クライシス対策の観点から考えると、A大学大学院や出資元企業には認識の甘さがあったように思います。

実は、B氏の差別的な発言は今回が初めてではなかったのです。弊社の独自調査によると、約7年前の2012年から「隣のベトナム人がクチャラーすぎて死ぬ」「馬鹿の相手してる暇はないです」などの問題投稿がおこなわれていました。さらに、弊社が設定しているリスク項目に従ってB氏の投稿を分析したところ、「悪口」「モラルの欠如」「ヘイトスピーチ」などの多数の項目に該当していました。

A大学大学院や出資元企業は、B氏のSNSでの発言を見落としていたか、あるいはAIの第一人者として目をつむっていたのです。

今回、A大学と出資元企業4社は即座にB氏の差別発言に対して遺憾の意を示し、寄付の停止を発表することで損害を水際で抑えました。しかし、自社に批判が及んだ場合の損害を考えれば、過去に投稿された内容を精査して、炎上に発展するような投稿を早期に発見し、対策しておく必要があったのです。

※1 B氏が発足させたA大学発のスタートアップ企業。主なプロジェクトは、ブロックチェーン技術を基盤としてAIの予測精度を向上させたオープンソースプラットフォームの開発。

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