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携帯ショップの「クソ野郎」炎上から考える、企業のデジタル・クライシス対策について

公開日:2020.08.01 最終更新日:2023.06.16

※この記事は雑誌『美楽』2020年8月号の掲載内容を一部修正の上、転載しております。

2020年1月8日、携帯ショップの店長から「クソ野郎」と書かれたメモを渡された、という信じがたいツイートが投稿されました。
直接メモを受け取ったのは投稿者の知人で、携帯ショップで機種変更をしていたところ、渡された書類に店長から担当者に向けたセールス指示書が紛れていたとのことです。なお、指示書には投稿者の知人を指して「クソ野郎」と記載するだけではなく、追加プランの押し売りを推奨する内容も含まれていたそうです。

この投稿はメモの悪質さから瞬く間に拡散され、投稿日翌日の1月9日時点で1万件以上リツイートされました。
投稿には店舗名、地域、キャリアなどの情報は記載されていなかったものの、一般ユーザーからの指摘でキャリアが判明。その後メディアの取材で「千葉県市川市」の通信事業A社の代理店で発生したことが明らかになりました。
そして、1月10日にはショップを運営している代理店企業B社の公式ホームページに一連の事象に関する謝罪文が公開されることになりました。

今回の事象について、メモを書いた従業員はけしからん。企業はもっと顧客対応について指導すべきだ。という意見はもっともです。
しかし私は、それだけでは解決できない問題も含まれているように思います。
例えば、従業員が顧客からの暴力や理不尽な要求、その他の嫌がらせなどに晒される「カスハラ(※1)」です。コールセンターや携帯ショップでは問題が深刻化しており、今回の事象が顧客から受ける日常的な強いストレスの発露だった場合、顧客の不当な行為から従業員を守る企業全体の仕組みが必要になります。
また、ネット上で自社の悪評が拡散されるリスクを従業員が認識していなかった可能性もあります。この場合、ネット炎上が起こった場合のシミュレーションや同業他社の事例共有を行なうことで、一人ひとりにデジタル・クライシスへの危機意識を持たせることも重要です。なお、すでにSNS上で危険な投稿を行なっている、自社の従業員のものと思われるアカウントが存在する場合、問題が顕在化する前に個人を特定することも有効です。

B社が公開した謝罪文によると、同社では全ての従業員に対して定期的に顧客対応の研修を行なっていたそうです。しかし、実際のところは十分な対策ではなく、今回の問題が発生しました。
顧客に対する感謝の意識や誠意を従業員に身につけさせることが大切であることはいうまでもありませんが、企業は従業員個人の良心に任せるだけでなく、デジタル・クライシスを仕組みで防ぐ必要があるのです。

※1 「カスタマーハラスメント」の略。

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