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「#検察庁法改正案に抗議します」はBotによる投稿か?ネット世論の分析の必要性について

2020.09.01 最終更新日:2022.09.08

※この記事は雑誌『美楽』2020年9月号の掲載内容を転載しております。

内閣の判断によって検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案に関して、ネット上では「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグの付いた投稿が大きく拡散されていました。SNSの投稿分析で知られる鳥海不二夫准教授の調査(※1)によれば、「#検察庁法改正案に抗議します」を含む投稿は、「5月8日20時から5月11日15時までの間に、リツイートを含めて4,732,473件,リツイートを除くと,564,797ツイート」されたとしています。またNHKニュース(※2)によれば、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグの付いた投稿は、2日間で延べ480万件にもなり、10日には「母の日」を抑えて長時間ツイッターのトレンドになったと報じています。

投稿が短期間で急激に拡散をされたことを受け、多くの国民が改正法案に反対しているという情報が伝達されているように思われます。しかし480万件の投稿が行われていることを根拠に、国民の大半が改正法案に反対しているとすることは誤りであると考えられます。480万件という数字は見せかけであり、実態の反対者数を水増ししている可能性があるためです。

例えばボットと呼ばれる自動化されたアカウントの存在が考えられます。ボットとは機械的に投稿やリツイートを行うことができ、1アカウントで大量の投稿を行うことができる仕組みです。このボットを用いて同じ投稿を繰り返し行い、あるいは大量にリツイートすることで大きく投稿数を増加させることができます。実際にボットを使用して1日に数十から数百件も投稿を行う事例(※3)も発見されています。

また鳥海准教授の調査によれば、20回以上「#検察庁法改正案に抗議します」が含まれるツイートを投稿したアカウントは、全体の10%ほどだと試算されています。このことから一部のアカウントが同じ内容を、表現を変えて、繰り返し投稿している事実が明らかになっています。さらに、リツイートされた投稿の半分以上は、70回以上リツイートしたアカウントによって投稿されたことも明らかになっています。この70回以上リツイートしたアカウントは、「#検察庁法改正案に抗議します」に関与した全アカウントの2%程度になります。すなわち全体の約2%のアカウントの行ったリツイートが、全体のリツイートの半数以上を占めるということがわかります。

これらの事実から想定されることは、一部の検察庁法改正案に反対するアカウントが、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグの付いた投稿を見つけては、リツイートをし、投稿を繰り返していたのではないかということです。少数のアカウントが実態以上に大きく拡散していた可能性があるのです。

5月18日には検察庁法の改正案について今国会での成立を見送ることになりました。ネットの投稿は政治の世界においても大きな影響力を与えるようになっています。ネット上の投稿について分析を行い、正しく実態を把握しなければ、判断を誤ってしまう可能性があるのです。

※1 https://note.com/torix/n/n5074423f17cd
※2 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200511/k10012425431000.html
※3 https://twitter.com/sin007777/status/1259390143258976256?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1259390143258976256%7Ctwgr%5E&ref_url=https%3A%2F%2Fnlab.itmedia.co.jp%2Fresearch%2Farticles%2F22436%2F

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