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化粧品メーカーの事例から考えるステルスマーケティングの効用

2021.05.01 最終更新日:2022.09.05

※この記事は雑誌『美楽』2021年5月号の掲載内容を一部修正の上、転載しております。

化粧品メーカーのA社は、自社の従業員が身分を隠して自社及びグループ企業B社の製品を宣伝していたとして謝罪を行いました。
発端は5ちゃんねる内の投稿で、いわゆる「ステマ」(※1)ではないかといった告発でした。その後、不特定多数のネットユーザーによって該当社員の素性を特定する動きが見られました。企業用の個人ウォンテッドリー(ビジネスSNS)とツイッターのプロフィール画像の一致を突き止め、氏名や顔写真だけでなく、該当社員がPR担当者であることが明らかにされたのです。さらに該当社員の「インフルエンサー採用」されていた経緯や製品発表会に招待されていたことも特定されました。
またネット上で影響力のあるインフルエンサーが本件を取り上げ、一気に事象の拡散が進み炎上状態に到達したのです。

これらの動きに対しネット上の声を分析したところ(※2)、3つの論調が確認されました。1つ目がステマ騒動やA社の謝罪リリースについて否定的な内容です。「もう二度と買わない」といった不買行動を示唆する投稿や、一社員の投稿に対して「切り捨てるのはひどい」といった投稿が見られました。2つ目がステマは許されないが、商品は良いといった擁護の声です。好きな商品を従業員がSNSで紹介したこと自体は責められることではないといった意見などが見られました。3つ目が美容業界全体の問題を指摘するものです。A社以外の会社においても同様の事象が定常的に発生しているのではといった投稿が行われました。

これらの論調いずれにおいても、ステマに対して批判的であるという点は一致しています。
ではなぜ企業は批判される可能性があるにも関わらず、こうした手法を取り入れるのでしょうか。その背景にはステマの「コスパの高さ」が考えられます。

今や情報の取得は検索ではなくSNS。商品の購入を検討するユーザーは購入前にSNS上の口コミを確認しています。ある調査によれば全体の約85%が購入前に口コミを確認すると示しています。また従来の宣伝手法と比較し、口コミ投稿の単価の安さや投稿における工数の少なさも特性として挙げられます。広告出稿と比較しても割安で、対応工数の削減効果が見込めることから、費用対効果の高い手法と考えられているのです。
加えて「PR」表記への懸念も考慮する必要があります。上記調査によれば、PR等の表記があることが理由で購入を見送るユーザーは15.2%に及ぶとされています。

このように口コミは商品購入という意思決定には有用な一方、PR表記はマイナスに働く可能性があります。そうした中で企業に求められる対応は、ステマとの向き合い方を見定めることです。今回のA社の事例から明確であるように、企業がステマを指摘された場合の損失は計り知れません。確かに効果が出てコスト的にも魅力的に見える手法ですが、倫理的に問題がないか、あるいは企業として炎上リスクが見られないか、十分に吟味する必要があるのです。

※1 ステルスマーケティングの略。広告であることを隠しながら宣伝し、消費者を欺く行為のこと。宣伝と気付かれないように口コミで発信・伝播を図ること。
※2 1月10日から31日にかけてTwitterで投稿された「A社」の社名をキーワードとして含む投稿、8,967件を目視で調査・分析を行った。

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