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増加するインターネット不適切広告 その影響と企業が実行すべきこと

公開日:2021.09.01 最終更新日:2023.06.16

※この記事は雑誌『美楽』2021年9月号の掲載内容を一部修正の上、転載しております。

2020年7月、健康食品の通信販売業A社のウェブ広告が「薬機法違反」として摘発されました。問題となった広告は、サプリメントであるにも関わらず、医薬品のような効果効能を謳ったもの。この事件は、インターネット広告業界に大きな衝撃を与えました。その理由は、同社の社員だけでなく、広告代理店の社員も逮捕されたという点です。これまで警察当局が広告主以外の関係者を何人も規制した事例は少なく、代理店や制作会社に動揺が広がりました。

また、大手化粧品メーカーの広告において、効果に対する体験談を語る女性の写真が画像販売サイトの素材であることが判明した事例も発生。写真の女性があたかも商品を購入し、体験談を寄せているように見せかけたことが問題となりました。

不適切広告の事例は誇大広告だけではありません。気象庁の公式サイトに広告枠を設けたところ、偽ブランド品の販売サイトなど、サイトの掲載基準に該当しない広告が多数表示され、広告の掲載を即座に停止する事態となった例もありました。原因は、表示される広告が閲覧者の検索履歴と連動する「運用型広告」であったことです。このように、インターネット上の「不適切広告」の問題が増加しています。

本来、広告は薬機法や景表法、医療広告ガイドラインに違反することがないよう注意しなければならないものです。しかし、インターネット広告の場合、テレビや紙媒体と比較して、チェック体制が甘く、野放しになっています。

こうした事態を受けて、昨年8月に薬機法が改正。虚偽・誇大広告規制に対する課徴金制度が導入されました。懲罰は広告主だけでなく、代理店や制作会社も対象となります。

不適切広告は世界的に問題になっており、米グーグル社によると、昨年は新型コロナウイルス感染症関連の広告も多く、掲載を阻止、削除した広告は31億件とのこと。同社はAIを活用した自動検知システムで不適切広告を削除し、その精度を常にアップデートしています。

不適切広告への対策が強化される理由は、消費者の安全はもちろんですが、企業の信用にも関わる問題であるということが挙げられます。自社サイトの広告枠、もしくは自社が出稿した広告と同じページに詐欺まがい、怪しげな広告が表示されることで、企業の信用や商品のイメージがダウンしてしまうのです。

実際、マイクロソフト社は不適切なコンテンツの隣に自社広告が表示されるのを懸念し、全世界のフェイスブックとインスタグラムへの広告支出を停止しました。

国やIT企業による不適切広告への対策は強化されていますが、自社でも対策は可能であり、起こりうるリスクに備えることが重要です。

例えば、botなどを使って広告費用・効果などを不正に水増しする「アドフラウド」に対しては、防止ツールを導入することで、不正クリックや不適切広告の表示をブロックすることが可能です。また、CMや広告を制作する前に、過去の炎上事象と照合し、リスクを洗い出す「クリエイティブリスク診断」などにも注力する必要もあるでしょう。

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