ホーム > 高級焼肉店のバイトテロ事件からみる 炎上リスクと防止

高級焼肉店のバイトテロ事件からみる 炎上リスクと防止

公開日:2022.02.01 最終更新日:2023.06.19

※この記事は雑誌『美楽』2022年2月号の掲載内容を転載しております。

2021年10月、西麻布にある高級焼肉店Aの従業員が不適切な動画を投稿し、炎上する事態となりました。インスタグラムのストーリーズにアップされた動画は、店の制服を着た女性が調理に使う岩塩製のプレートを笑いながら何度も舐めるというもの。この不適切動画は、炎上後に即時に削除されたものの、動画のキャプチャとともに拡散。従業員や店に対する非難の声が殺到しました。

焼肉店Aで発生したバイトテロの内容は、過去に起きたバイトテロの内容とさほど変わりはありません。しかし、炎上するまでの経緯が今までのケースとは異なっています。これまでは、ツイッターなどのSNSで不適切投稿を発見したユーザーが投稿者本人にリプライ(※1)したり、個人アカウントでリツイート(※2)したりすることで、拡散され、炎上するケースが殆どでした。一方で今回の事象は、不適切動画を発見したユーザーが、人気ユーチューバーであるコレコレ氏に報告。ユーチューブの生配信で取り上げられたことにより、多くの人が迷惑行為を知ることとなりました。不適切だと感じた投稿を本人ではなく、数百万人というフォロワーを持つインフルエンサーに通報し、拡散を依頼するケースが増えているのです。視聴者数が多いこともあり、炎上までのスピードも速く、事象の発覚から3、4日後にはテレビなどの各メディアで取り上げられ、さらなる炎上に至るケースもあります。

今回、炎上した焼肉店は、高級感を売りにしており、多くの著名人が通う有名店でした。不適切投稿に対しての批判は従業員だけにとどまらず、衛生管理や教育体制など、店に対しても多く挙がりました。売上はもちろん、「高級店」というブランドイメージも失墜してしまったことは否めません。

このように、バイトテロによる企業や店舗への影響は甚大です。過去にバイトテロが発生した外食チェーンB社では、清掃・研修のために全国350店舗を一斉に休業しました。その損失額は約1億円とのこと。寿司チェーンC社では、バイトテロ発覚後、株価が前日より下落。金額にして27億円相当の損失となりました。個人経営の飲食店では、閉店・廃業に追い込まれるケースも発生しています。また、企業だけなく、不適切投稿をした本人への代償も大きいでしょう。多くの事象で損害賠償請求や書類送検だけなく、本人の顔写真や本名、年齢、学校名などが特定され、ネット上で拡散されています。今回の焼肉店の事象でも、コレコレ氏の生配信の翌日には、従業員の個人情報はもちろん、親の職業までもが特定されています。

バイトテロを防止するには、SNSの使用ルールを雇用契約書や研修などで明確に提示することが必須です。しかし、携帯の持ち込みの禁止を定めたり、研修を実施したりしたのにも関わらず、入社時から時間が経過し記憶から薄れ、被害が発生した企業もあります。そのためSNSの使用ルールを明確に定めるだけでなく、従業員には、炎上事例や禁止行為の代償を定期的に伝えることで、炎上の抑止を行っていくことが必要なのです。その上でSNSや動画サイトを日々モニタリングし、炎上の火種となる投稿を早急に発見し、対処する体制を構築することが重要です。

※1 投稿に対して返信をすること。
※2 ツイートを再びツイートすること。 フォロワーとツイートした情報を共有できる機能。

最新記事の更新情報や、リスクマネジメントに役立つ
各種情報が定期的にほしい方はこちら

記事一覧へもどる