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スープ専門チェーン店の騒動から考える企業が取るべき姿勢とは

公開日:2023.08.01 最終更新日:2024.03.21

※この記事は雑誌『美楽』2023年8月号の掲載内容を転載しております。

2023年4月、スープ専門チェーン店A社が離乳食の無料提供を全店で開始すると発表すると、SNS上で論争が巻き起こりました。「子連れにはありがたい」「良い取り組みだ」という賛同的な声がある一方で、「子どもが嫌いだからもう行かない」「一人客を大切にしないのか」といった否定的な声も上がったのです。

今回の騒動が大きくなった要因の1つは、Webメディアの報道といえるでしょう。一部のメディアが、A社が炎上しているかのように報じたのです。その記事がYahoo!ニュースに転載されたことで、1日7千件程度だった関連投稿件数が1日12万件までに急増しました(※1)。

大きな論争に発展したA社の発言ですが、実は今回のような場合は「炎上」とは呼べません。SNS上でのネガティブな投稿の割合が27.1%に対し、ポジティブな投稿は72.9%(※2)と、実際は賛同・応援する声のほうが圧倒的に多かったのです。このような状態を「非実在型炎上」と呼びます。文字通り「実在しない炎上」であり、少数の批判をメディアが大げさに報じることによって、まるで炎上しているかのように錯覚してしまうのです。

A社の発言が炎上しなかった要因は、同社の対応にもあります。騒動を受け、同社は公式リリースを発表。その内容は、企業理念に基づいた過去の取り組みを具体的に述べ、改めて「離乳食の無料提供」に対する信念と熱意を伝え、理解を求めるものでした。そして「特定の客だけを優遇する考えはなく、すべての客を大切にしている」という姿勢を示したのです。

炎上した際、たとえ間違ったことをしていなかったとしても「炎上を鎮火させるための常套句」として謝罪するケースは多いでしょう。一方で、同社の声明には謝罪のニュアンスは一切含まれておらず、ネット上でも「謝罪しない」という毅然とした態度が称賛されています。

このように、落ち度がないのならば必ずしも謝罪する必要はありません。企業努力や熱意を誠心誠意伝えるほうが有効なのです。A社の事案は、 間違ったことをしたわけでもないのに批判された際のモデルケースとなりうるでしょう。また今回のように、昨今はWebメディアがPV数を稼ぐ目的で必要以上に炎上を煽る側面があります。煽り記事に惑わされず、冷静に状況を判断することも重要です。

※1 ソーシャルリスニングツール「NetBase」で収集した、「A社の社名」を文中に含むインターネット上の投稿件数が、無料提供発表の翌日の4月19日には7千件程度だったが、メディアが報じた4月20日には約12万件まで、投稿数が急増した。
※2 ソーシャルリスニングツール「NetBase」による自動精査結果
調査期間:4月18日~4月30日

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