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「Brand Integrity」の視点で考察する「炎上しづらい企業」の性質

公開日:2022.07.28 最終更新日:2024.03.21

SNSの普及で「一億総メディア」の時代が到来した今、企業にとってネット炎上は他人事ではありません。自社の価値を高めるコミュニケーションを実践する上で注目されているのが、「Brand Integrity」という考え方。「炎上しづらい企業」になるために欠かせない危機管理のポイントを解説します。

今の時代に求められるのは「誠実さ」

近年はクレームなどを企業に直接伝えず、インターネット上に書き込むことで一石を投じようとする消費者行動が広がっています。
従来は顧客と企業の間で個別かつ閉鎖的に営まれていたコミュニケーション(クレーム対応)が、ネット上で一方的に晒された挙げ句に炎上するケースも後を絶ちません。

このような時代の企業コミュニケーションに求められるのは、「Brand Integrity(ブランド・インテグリティ)」という考え方です。
「Integrity」は「誠実、正直」という意味で、自社にとって都合の悪いことが起こったときに黙り込んでしまう企業は誠実と言えないでしょう。
当たり前のことですが、公明正大を是とする誠実さと倫理観に徹したコミュニケーションを常に意識しておかなければなりません。
つまり、「炎上してからようやく対応する」では遅いのです。

では、対応の内容とスピードの差は、どれほど大きな反応の違いを生むのでしょうか?

ここからは、実際に起こった直近の事案を見ていきましょう。

「沈黙」と「即謝罪」 告発ツイート後に分かれた対応が招いたもの

2022年5月28日、テレビCMでも知られる中古車販売大手のA社の展示車両とみられる乗用車が、前後のナンバープレートを装着しないまま公道を走っていたという複数の目撃情報がTwitter上に寄せられました。

ツイートには証拠写真が掲載されたこともあり、投稿からわずか1日で1万3,000件ものリツイートがされました。A社は猛批判を浴びて炎上します。

ところが、ネットメディアの取材に答えた一部店舗の担当者は「ルール通りにやっている」と反論し、「ナンバープレートはダッシュボードの上など見える場所にあれば問題ない」とも主張しました。
しかし、そのような強弁がまかり通るはずはありません。ナンバープレートを外したまま公道に出れば道路交通法に触れるということは、自動車業界に携わらずとも多くの人が知っている”常識”だからです。

さらに、炎上が燃え広がった後も本件に関するA社からの公式リリースは一切なく、メディアの取材に応じることもありませんでした。
Twitter上では同業他社の類似行為も報告されましたが、コンプライアンスの欠片も見当たらない対応を取ったことで批判はA社に集中。
「執拗なセールスを受けた」など、ナンバープレートの話とは無関係の投稿まで拡散する結果を招いたのです。

一方、A社と同じように道交法違反の行為がTwitter上に投稿されて物議を醸したものの、まるで正反対の対応を取ったのが大手生活用品メーカーのB社でした。

6月7日、栃木県内にある信号機のない横断歩道を渡ろうとする歩行者の手前で停止した車のドライブレコーダー映像に記録されたのは、道路脇をすり抜けて追い越していくミニバンです。
運転席のドアには、B社のロゴマークがはっきりと見て取れました。

Twitterが騒然となったのを受け、B社が取ったのはどんな対応だったでしょうか?

それは、グループ会社の従業員による道交法違反の行為を認めるお詫び文をその日のうちにリリースすることでした。

投稿された映像を見た人が多数いた中、お詫び文に書かれた事実関係の説明については不足と誤認があるとの批判も出ました。
しかし、B社に対する不満の声はさして広がらなかったのです。
その理由が、SNS上の炎上が発生後、すぐに炎上を認識して、時間を置かずに対応を行ったことは言うまでもないでしょう。

「沈黙」は炎上の連鎖リスクを高めるだけ

さて、公式には何の対応もしなかったA社の騒動も、B社と同様に収まったかのように見えるかもしれません。
しかし、「Brand Integrity」が重視される時代は、いくら沈黙を続けたところで逃げ切れるわけではないのです。

不誠実で倫理観に欠ける対応に不満を持ったネットユーザーは、いつまでもそれを覚えています。
しかも、次に何かしらの不適切な行為が発覚すればたちまち炎上し、今回の出来事もすぐに掘り起こされてしまうでしょう。

都合の悪いコミュニケーションを遮断するというレッテルを貼られた企業を待ち受けるのは、炎上の連鎖に陥るリスクです。
そんなリスクが表面化すれば、企業・ブランドのイメージを高めるどころか、維持することさえ困難になるのは言うまでもありません。

「炎上しやすい企業」が陥った吊るし上げの連鎖

そうして「炎上しやすい企業」になってしまったのが、大手牛丼チェーンのC社です。

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人気漫画とコラボレートした「お名前入りオリジナル丼」をもらえるキャンペーンに関する顧客対応の悪さが批判されたのは3月のことでした。

参加者の問い合わせに対し、お客様相談室長の立場にある幹部社員が返したのは「法務局にご相談されてはいかがでしょうか」「訴訟をされるとのことでしたら、弊社弁護士が真摯に対応させていただきます」といった高圧的な言葉です。
その一部始終がTwitter上で晒されるや否や、激しい批判を浴びました。

ところが、翌4月にはC社の常務取締役企画本部長(当時)が、にわかに信じ難い舌禍を起こします。
自身が講師を務める大学の社会人講座でジェンダー・人権問題を蔑ろにする言葉を口にし、またしても激しい非難を浴びてしまったのです。

C社は公式サイトで「コンプライアンス遵守の徹底に取り組む」と明記した謝罪文を公開し、常務取締役の解任を発表しました。

しかし、3度目の炎上事案が発生したのは、それからわずか2週間余りのことです。
追い打ちをかけたのは、C社が採用説明会への参加を予約した大学生を外国籍であると思い込み、エントリーすら拒否していたという差別的な行為でした。

先の謝罪文で示した「コンプライアンス遵守」を真っ向から否定するかのような対応に、Twitter上では「もはや根本的に人権意識を書いている企業としか思えない」「名ばかりのコンプライアンスを根本的に見直すことが求められる」など厳しい声が相次ぎました。

炎上を一過性の現象と捉えてはいけない

立て続けに起こったC社の炎上事案に共通するのは、すべてがSNS上で告発されて拡散したという点です。

このことからも、炎上が一過性の現象ではないというのは明らかで、対応を誤った場合は連続するリスクがあることを認識しておくべきでしょう。

「炎上しやすい企業」のレッテルを貼られれば、「またしても」という切り口で不祥事などを大々的に報じられるようになってしまい、事業活動を阻害する致命的なダメージを受ける可能性も高まります。

企業の広報・危機管理はこれまで、世の中から何か反応があったときに初めて対処する「リアクティブ型」が主流でした。
しかし、「Brand Integrity」に則ったコミュニケーションの実践には、企業がステークホルダーに積極的に働きかける「プロアクティブ型」のアプローチが欠かせないのです。

とは言え、従来の広報・危機管理体制を転換する上で、何から手をつけたらいいのか分からないと戸惑う企業は少なくないかもしれません。

そのような場合、一体どうすればいいのでしょうか?

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ネット上の口コミやニュース記事などを収集し、ネガティブとポジティブな論調に分類。今後のリスクを診断し、マスコミ対応や配信リリース作成などをサポートするのが強みです。

万一炎上した場合も、事態が収束するまでネット上の投稿やネットメディアの動きをモニタリングし、検索エンジンでクライアント企業に関する不適切なワードが表示された場合は沈静化します。

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