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炎上が起きた時 謝り方を誤るな

公開日:2023.07.28 最終更新日:2024.03.21

SNSやネットへの投稿に批判的なコメントが殺到する「炎上」が日常茶飯事となっています。企業・団体の場合、そのリスクは不適切な情報発信、広告表現、アンチによる誹謗中傷などに端を発するケースがほとんどですが、近年は炎上発生時の対応や謝り方がユーザーを逆なでし、さらなる炎上を生む事案が増えています。7割近いSNSユーザーが「炎上後の対応を確認する」すなわち「謝り方まで注視している」というデータも明らかに。炎上が起こってしまった場合、世間、消費者に納得してもらう謝罪のあり方とはどうあるべきでしょうか。本記事では、炎上発生時の「謝り方」に着目して解説します。

今も誰かがどこかで燃えている

2021年に発生した炎上事案は1,766件(シエンプレデジタル・クライシス総合研究所調べ)で毎日4.8件のペースで発生しており、2022年は前年比で11.1%減少したものの、1,570件と依然として高いレベルで推移しています。

2020年~2022年の月別炎上発生件数の推移

「謝り方」は危機管理

炎上が企業に与えるダメージは甚大です。ブランドイメージが傷つくだけではなく、自社製品の不買運動に発展したり、株価が下落したりすることもありえます。それらの回復には数年を要することもあります。

ある研究によれば、中規模以上の炎上による平均的な株価の下落幅は0.7%とのデータもあるなか、事例によっては、一時30%も株価が下落したものや、炎上後に倒産した企業もありました。

また近年、炎上事案がメディアに取り上げられる数、率ともに増加傾向にあり、記事化、放送までの時間も急速に短くなっています。炎上に特化して、積極的に報じるまとめサイトやインフルエンサーも存在します。企業・団体の広報担当者にとって、炎上対策、特に適切な事後対応(謝罪の仕方)は避けて通れない危機管理領域なのは言うまでもありません。

「謝り方」まで見られている

SNSの普及で、企業―消費者間の双方の反応・反響が瞬時に可視化されることによって、顕著になってきた消費者行動があります。それは、ネットユーザーが炎上した企業の謝罪対応まで注視している、という点です。

「炎上後の対応を確認する」と回答した人の数は、2021年、22年ともに67.9%と高水準でした。さらに、炎上後の対処や内容が納得できるものだと良い印象を受けると回答した人は37.7%から38.0%となっており、2021年とほぼ同等の数値をキープしています。つまり、万一、炎上してしまった場合でも、謝り方によっては世間を納得させてリカバリーできる。一方で、謝り方を間違うと、火に油を注いで2次炎上につながることがあるのです。以下に示す事例が、事後対応の重要性が高まっていることを印象付けます。

何に対しての謝罪か

約7割のSNSユーザーが炎上後の企業の対応、謝罪の仕方まで注視しているなか、炎上に陥った企業は、謝罪の方法・内容まで見られている意識が欠かせません。何に対しての謝罪か、どんな表現で謝罪するのが適切か、などを短期間に検討し、導き出し、発信しなければなりません。

しかし、「謝り方」の失敗でさらなる炎上に発展する企業は後を絶ちません。炎上に対する謝罪が誠意や誠実さを欠いていると判断され、消費者感情を逆なでする、2次炎上、3次炎上が近年は散見されるようになりました。その理由として挙げられるのは、何をどこまで謝るのか、発生した事象と世間の論調の分析や見極めを、自社内で客観的に、しかも短期間で行うことが極めて難しいということがひとつ。他には、それらを吟味しないまま、いわゆる「テンプレ謝罪」と言われる定型文に飛びついてしまうことなどが挙げられます。

中華料理チェーン店の「しっぽ切り」

ここで、他山の石となる事例を紹介しましょう。2022年7月、中華料理チェーンA社の仙台市の店舗を舞台に起こった炎上です。

ことの発端は元従業員を名乗る男性が店に「ナメクジが大量にいる」などとTwitterに投稿したことでした。瞬く間に拡散し、マスメディアも追随。大騒動に発展しました。そののち、さらに元従業員が記者会見で不衛生な調理場の環境を告発したという炎上事案でした。

A社は、最初の投稿で炎上した際、すぐに事実関係を「調査中」とし、「多大なご心配とご迷惑をおかけしておりますこと、心よりお詫び申し上げます」とする謝罪のプレスリリースを出しました。

そこまでは、炎上発生時の初動としては無難な動きと言えますが、失敗したのは、プレスリリースのタイトルを「フランチャイズ店舗に関する一連の書き込みに関しまして」にしたことでした。この表現が世間に、当事者意識が欠如している、責任逃れとの印象を与えてしまったことは否めません。

A社の看板のもとで営業する店舗で起こったにもかかわらず、それはあくまで「フランチャイズ店舗」でのこと、と突き放す印象を世間に与え、Twitter上では「とかげのしっぽ切りだ」などのネガティブな反応が集まりました。

結局、A社は、炎上から約1カ月で仙台市の2店舗とのフランチャイズ契約を解除。該当店舗は閉店を余儀なくされました。

しかし、A社はその後のプレスリリースや発信で「軌道修正」に舵を切ります。個人や店舗に問題を押し付けるのではなく、組織風土の問題としてとらえ、全国の店舗に対する抜き打ち検査などの取り組みを公表して、事態の鎮静化を図りました。このように、フランチャイズ店舗で炎上した場合でも、、本社として管理・監督責任を認め、再発防止に全力で取り組む姿勢を示し、企業側も痛みを負うことで、世間に納得してもらうことが大切です。

清掃業務大手会社の挽回

続いて紹介するのは、2022年8月、清掃業務大手B社のロゴが入った営業車が神戸市三宮駅付近の交差点に猛スピードで侵入し、信号無視したことに端を発する炎上です。

その車は暴走を続け、走り去っていきましたが、その際、横断歩道を渡ろうとした幼児をひきかけた衝撃の瞬間が、別の車のドライブレコーダーでとらえられていました。その映像は、「B社さん、営業車で堂々と信号無視をかまし、危うく児童を掃除しかける@神戸三ノ宮駅付近」という投稿とともに拡散され、危険運転をした運転手を特定しようとする動きが起こり炎上に発展しました。

この時、B社の「どのような内容の謝罪をするのか」は模範的でした。「当社フランチャイズチェーン加盟店の営業車両による危険な走行について」というタイトルで公式Twitterアカウントに投稿し、「危険な思いをされました歩行者様におかれましては、心よりお詫び申し上げます」と謝罪しました。当該運転手に直接指導を行ったことも記載。資本関係がないフランチャイズ加盟店従業員がやったこと、で済ませることなく、本社が責任を認めたことで炎上を収束させた好例と言えるでしょう。

大手宅配寿司チェーンの二度の過ち

最後は2022年10月11日の「国際カミングアウトデー」に合わせて、その日の趣旨を理解せずになされた大手宅配寿司チェーンB社のTwitter投稿による炎上です。そもそも国際カミングアウトデーとは、性的指向や性自認をカミングアウトし、社会全体で多様な性的マイノリティへの理解を深める目的で制定された日。ところが、B社は同社の公式Twitterで以下のような書き込みをして物議をかもしました。

B社は、実はサンドウィッチ店から始まった。

#カミングアウトの日

LGBTQと社会全体の連帯の意味を込めた「カミングアウト」の意義を取り違えて、「便乗」ともとれるPR発言をハッシュタグとともに投稿してしまったB社。「無神経だ」などの反響が殺到し、B社は投稿を削除。ところが、翌日に出した以下の謝罪文が、再びSNSユーザーの感情を逆なでしてしまいました。

「昨日の投稿に関しまして、ハッシュタグに関する理解にかけ、不適切な投稿となってしまいご不快な思いをさせてしまったことを心からお詫び申し上げます。」

この謝罪のどこがまずかったのでしょう。

ずばり「不快な思いをさせてしまった」の部分です。本来、謝罪とは自分たちの失敗やあやまちをわびるもの。今回の場合、B社(企業)が、その不見識を謝罪するのが筋でした。しかし、B社の不見識やそれに端を発した行動について謝罪がないため、「不快な気持ちになったとあなた方(メッセージの受け手側)が主張するから謝っている」という印象を与え、「何が悪かったのか理解していない」という読後感をSNSのユーザーに与えてしまいました。

ご不快構文、テンプレ謝罪は注意

単に謝罪するだけでは不十分。何をどう謝るかを間違えると、「謝罪が謝罪になっていない」とさらなる反発を招くことになりかねません。このパターンは近年「ご不快構文」とも言われ、テンプレート謝罪文の悪例として、避けるべき表現とされています。万一の場合の備えとして謝罪の定型文が有効に機能する場合もありますが、状況に応じて使い分けることが肝心です。

また、謝罪文やプレスリリースを、PDFファイルや写真画像でSNSに投稿するのは避けましょう。それによって炎上事案にまつわるキーワードで検索しても、意図的に発見されにくくしているとの誤解を与えかねないからです。「ご不快構文」に類似した謝罪表現の悪例として、「誤解を招いてしまい」や「遺憾である」などの表現もあります。「誤解を招いてしまい」は「私たちは正しいのに誤解しているのはあなただ。間違っているのはあなただ」と受けとめられ、「遺憾である」は元来、「期待通りにならず不満だ」という意味で、謝罪に用いるのはご法度です。

まとめ

  • 7割のSNS・ネットユーザーが炎上後の企業の謝り方まで注視している。
  • 炎上が起きた場合、迅速な対応が必要だが、謝り方を間違うと痛い目に合う。
  • 謝罪がさらなる炎上を招く理由は「謝罪が謝罪になっていないから」。
  • ご不快構文、テンプレ謝罪は注意。
  • 炎上時には「何をどこまでどう謝るか」「発生事象と世の論調」の見極めが重要。

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