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食品・料理への異物混入による炎上。居酒屋チェーンの事例に学ぶ「塩対応」と「神対応」

公開日:2022.01.31 最終更新日:2023.06.21

飲食店などが恐れる過失の1つが「異物の混入」です。SNSが普及した今、その場しのぎの対応でトラブルをもみ消すことはできません。企業活動に不可欠なデジタル・クライシス対策の観点から、炎上被害の拡大を防ぐ方法をご紹介します。

消費生活相談の危険情報、2位は「調理食品」

国民生活センターが2021年10月にまとめた「消費生活年報2021」によると、2020年度に寄せられた消費生活相談に関する危険情報は全国で2,092件に上りました。

危険情報とは、商品・役務・設備に関連して身体にけがや病気(疾病)などの危害を受けたわけではないものの、その恐れがある情報を指します。

2020年度は前年度より12.1%(288件)減少したものの、それでも1日当たり平均5.73件を受理しました。

言うまでもなく、これらはあくまでも国民生活センターと全国各地の消費生活センターなどが把握した範囲の数字です。 このため、水面下ではさらに多くの件数が発生していると考えられます。

さて、2,092件の商品・役務などの内訳を見ると、1位は「四輪自動車」(229件)、2位は「調理食品」(97件)でした。

自動車に機能故障などの不具合が発生した場合、乗員の身体に危害を及ぼしかねないというのは、何となく想像できるかもしれません。

しかし、大掛かりな工業製品とは異なる「調理食品」の危険情報が「四輪自動車」に次ぐ数に上る現状を知らない人は、意外に多いのではないでしょうか?

さらに驚くことに、「四輪自動車」と「調理食品」が1、2位を占めている状況は、2017年度から変わっていないのです。

危険情報の8割超は「異物の混入」

日常生活で調理食品を利用するたび、けがや病気のリスクを警戒するという人は少ないでしょう。 世の中の多くの人にとって、食べ物は安全であって当たり前なのです。

それにしても一体、「調理食品」がどんな危険をもたらしているというのでしょうか?

2020年度のデータを紐解いてみると、「調理食品」に関する危険情報の8割超を占めたのは「異物の混入」(84件)でした。 およそ4日に1件のペースで発生している計算で、年報には複数の事例も掲載されています。

  • ・「テイクアウトした牛丼を食べたら歯に固いものが当たった。口から出したら鉛の玉のようなものだった。業者が調査した結果、店の精米機の部品だったと判明した」
  • ・「ハンバーガー店で購入したチキンナゲットを食べたら、ステープラーの芯が出てきた」
  • ・「新聞の折り込み広告から注文したフリーズドライの雑炊セットを食べたら、金属たわしの一部のようなものが入っていた」

さて、これから紹介するのも、にわかには信じられない異物が混入していた事例で、企業の対応次第では大規模なデジタル・クライシスを引き起こすという怖さを知らしめることにもなりました。

早速、事の経緯と顛末を見ていきましょう。

場当たり的で小出し、批判を浴びた店舗の「塩対応」

2021年11月16日未明、Twitterにアップされた投稿に添えられていたのは、大手居酒屋チェーンの東京都内A店が来店客に提供した、もつ鍋の写真でした。

投稿の主旨は「料理の中に大量の小さな虫が入っていた」というもの。ツイートは夜が明けてから次々と拡散され、店舗への批判が殺到しました。

しかし、騒ぎが広がったのは、不衛生な料理だけが原因ではありませんでした。 それ以上に大きな批判を浴びたのは、現場の店員による場当たり的で小出しの「塩対応」だったのです。

投稿者がツイートで明らかにしたところによると、対応した店員が最初に取った行動は、もつ鍋を写真に撮られないように厨房に下げたことだったといいます。

その後、投稿者に対して「お詫びとしてのデザート提供」「代金の一部割引」などを持ち掛けたものの、納得してもらえないことが分かると「店長に確認します」と言い残して立ち去り、20分間も戻ってきませんでした。

さらなる値引きを提案した店員に対し、投稿者が「本部に連絡する」と食い下がると「店長に再度確認します」「今回のお代はいりません」との回答がありましたが、他の客の料理に虫が入っていないかどうかの確認を求めても、特段の対処はされませんでした。

Twitter上では野菜の洗浄・保管の不手際を指摘する意見だけでなく、その場しのぎの店員の言動について「よくある店の対応」「保健所に連絡という手もあります」と呆れた声が続出。さらに「このチェーンの別の店舗で同様の事態に遭遇した」と、A店とは直接関係のない過去の出来事を掘り起こすツイートも相次ぎ、炎上するに至りました。

投稿者がチェーンを運営する本部と保健所に連絡をしたのは、この日のこと。これに対し、本部が取った措置は迅速かつ適切で、A店のお粗末な対応とはまるで正反対と言えるものでした。

炎上を収束させた本部の「神対応」

投稿者から連絡を受けて初めて状況を把握した本部は翌11月17日、もつ鍋への虫の混入を認めて速やかに謝罪し、A店からの報告がなかったこと、保健所の立ち入り検査があったことを公表します。

さらに、投稿者にもコンタクトを取って健康上の問題がないかどうかを確認し、店員の非常時対応や店舗の衛生管理の指導を徹底する考えも明らかにしました。

本部のリリースを含む記事は一部ネットメディアで公開されたため、11月17日には2次炎上の現象が見られましたが、投稿者と本部の間でトラブルが続いていることが漏れ伝わるようなツイートはなく、一連の騒動は収束に向かったのです。

さて、先ほどご紹介したように、国民生活センターなどには毎年多くの「異物の混入」が寄せられています。 金属類など危険極まりない異物が見つかったケースもありますが、これらが全て炎上しているわけではないのも事実です。

騒ぎにならなかったのは、当事者である顧客(消費者)がSNSユーザーではなかった、あるいは混入していた異物の種類や量が取り立てて糾弾するほどのものではなかったからかもしれません。

しかし、顧客や消費者の健康、心情に配慮してしっかりとした初動対応を取った結果、世間の厳しい目に晒されるのを防げた事案があったとも考えられるのではないでしょうか?

誠意に欠ける企業対応は火に油を注ぐ

現に、異物の混入による炎上では不衛生な事実もさることながら、事後対応における「企業側の誠意のなさ」が非難された事案が見受けられます。

2020年9月に発生したイギリスに本社を置くEコマース運営会社Bの炎上事例は、その代表格と言えるでしょう。 炎上の発端は、B社が製造・販売しているプロテインバーの中に「大量の虫が混入していた」というInstagramのストーリーズ投稿でした。

その数日後、このコンテンツはショッキングな写真とともにTwitterに投稿され、1時間当たり2,884件の投稿数(リツイート)となって炎上します。

しかし、B社が翌日に公表した謝罪文には「この問題は当社の製造施設では発生していない」「人の健康へのリスクをもたらすものではない」と書かれていたことから批判が殺到、1時間当たりの投稿数は6,399件に跳ね上がりました。

企業対応を批判する投稿はなかなか収まらず、B社は調査報告書の公表を余儀なくされるなど、事後対応が長期化してしまったのです。

もちろん、Aの事例も本部の対応そのものに手抜かりはありませんでしたが、そもそも店舗から本部への報告がなく、事態の把握に時間がかかったのは問題と言えます。

炎上の火種となる顧客対応のトラブルのリスクを低減するためには、現場向けの教育、研修、各種マニュアルの整備などを進め、危機管理体制を現場まで浸透させていくことが不可欠なのです。

炎上を察知する体制構築と日頃の研修で備えを

では、そのために必要な取り組みは何でしょうか?

シエンプレが提供している「Web/SNSモニタリング」は、目視とAI解析を駆使した24時間体制のサービスです。 サイレントクレーマーの投稿など炎上の兆しをいち早く発見し、被害を防ぐ上で最も費用対効果の高い備えとして、業界などを問わず数多くの企業に採用されています。

万一の炎上時も、情報の拡散源や事実関係の調査、拡散経路のモニタリングを遂行。公式サイトのニュースリリース・企業見解に対するアドバイスを送り、場合によっては反論・検証記事をメディアに掲載します。

その後も、炎上が収束するまで世論調査・モニタリングを継続し、プロの手腕を駆使した包括的なサービスを提供。対応の優先度まで整理してご報告するため、顧客企業の担当者様の負担も確実に軽減できます。

また、eラーニングの「従業員向けSNS利用研修」は、他社で発生したさまざまな炎上事例を紹介し、問題が発生した経緯や原因などを詳しく解説するのが特長です。

企業の業務だけでなく、従業員が個人のSNSアカウントを利用する際の注意点も分かりやすく説明。投稿などの炎上を防ぐため、自社の規定やSNS運用ガイドラインの策定にも役立てていただけます。

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