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【第1回JDCアワード】【サポート&ケア賞受賞インタビュー】エムケイ株式会社様

公開日:2021.04.26 最終更新日:2023.05.31

コロナ医療従事者をタクシーで無料送迎

シエンプレ株式会社(以下、シエンプレ):2020年JDCアワードにおいて「医療従事者の無料送迎」「#MK猫写真」が見事「サポート&ケア賞」に輝きました。発案や取り組みのきっかけについてお聞かせいただけますか。

エムケイ株式会社 東様(以下、東様):「医療従事者の無料送迎」は社長の発案です。グループ会社である東京エムケイの社長が京都エムケイの社長に「今はこういう状況で売上も上がらないから、社会に役立つことをしたい。医療関係者の無料送迎なんてどうだろう」という話を持ち掛け、京都の社長も「やりましょう」と即合意しました。京都エムケイは阪神・淡路大震災時をはじめ、近年では京都府の豪雨災害時も医療関係者や行政向けのジャンボタクシーを用意した経験がありましたので、まずは京都府で始動しました。


阪神・淡路大震災の際に派遣した救援車両

シエンプレ:なるほど、経験がおありだったんですね。社会貢献は思い付きで継続できることではないですからね。

東様:そうですね。タクシー会社として何ができるかを考えましたら、まずは車を出すことが一番役に立つのではないかということになりました。

シエンプレ:素晴らしいですね。送迎するドライバーは挙手制で募ったと伺っています。それにも関わらず、100名以上が稼働されました。御社の従業員の皆様には、社会貢献の精神が根付いていらっしゃるのでしょうか。

東様:2020年3月、我々のドライバーに新型コロナウイルスの感染者が出た際、さまざまなところにお世話になり、ご恩返しをしようという思いがありました。当時はまだまだコロナ感染者が出始めた頃だったので、行政機関の方も手探りの状態でした。「社名を公表させてください」というご依頼に一瞬驚いたり右往左往したりする中で、行政・医療機関の方々に随分とお世話になったのです。

シエンプレ:そのような状況下で冷静に感謝の気持ちを感じていらっしゃったとは、本当に頭が下がります。

東様:ありがとうございます。我が社の姿勢は「正直であること」なので、社名を公表していただいたほか、該当するタクシー営業所や併設するボウリング場も閉鎖し、営業自体も2週間お休みさせていただきました。

シエンプレ:対応が早かったのですね、当時はまだ、営業自粛のようなルールはなかったと思うのですが。

東様:我々の少し前にコロナ感染者が出た九州の業界最大手のタクシー会社様が、2週間にわたり営業所を閉めると公表された事例があったんですよ。何かあれば参考になると思っていました。営業所の規模の違いは大きかったのですが、当社もやはり最終的には閉めるしかないということになりましたね。二次感染を心配せずにお客様にご利用し続けていただき、従業員も安心して働けるようにするためには、いったん閉めるしかないと。

シエンプレ:そうですよね。遊びに行って感染したわけでもないですしね。

東様:会社の矢継ぎ早な対応を見たドライバーたちも自分事として捉え、療養中の仲間の分まで頑張ろうと自主的に挙手してくれたのかもしれません。結果的に想定を上回る人数が志願してくれました。同時に、手を挙げてくれた高齢ドライバーには「今回は外れてください」とお願いしました。

シエンプレ:なるほど。そこはきちんとセーブされたのですね。ただ、医療従事者を送迎されるということについて、ドライバーのご家族などから不安の声などは聞かれませんでしたか。

東様:もちろん、ご家族の承諾を得たドライバーのみに限定していたので大丈夫でした。

シエンプレ:そうでしたか。公式Twitterに投稿された「#MK猫写真」も「癒やされる」と好評でした。物理的支援の心強さもそうですが、心理的支援もしっかりとされましたよね。この経営バランスの良さが素敵です。

東様:猫の写真は広報部でTwitterを担当している女性の発案なのですが。

シエンプレ:女性の方のアイディアだったのですね。

東様:当社はたくさんの方にご利用いただいているのですが、これからはもっと若い方にも認知していただき、ファン層を厚くしようという試みでした。京都がメインとは言え、私どもは全国を走っていますので、各地の猫と風景写真がいいのではないかと考えました。みんな結構、各地で撮影して送ってくれるんですよ。

シエンプレ:写真を撮る方も癒やされるのかもしれませんね。男性やベテランの方々は反対されませんでしたか。

東様:「いいんじゃないの、ホッコリするね」という感じでしたね。後にそうした人たちが仕事で訪問した寺社などから猫の写真を送ってくるようにもなりました。

京都市役所が協力、広がった感謝の輪

シエンプレ:「医療関係者の無料送迎」はインターネット配信もあり、全国的なニュースとして一気に広がりました。業績などへの好影響はありましたか。

東様:行政機関の方との信頼関係をより強固に築けたように思います。2020年4月から5月にかけての緊急事態宣言中は無料で送迎させていただいたのですが、その後も搬送関係のお仕事として当社をご利用してくださるようになりました。

シエンプレ:そのような波及効果もあったのですね。

東様:コロナに関わる医療機関の方々を無料送迎しようとした当初は、そもそもどの病院が感染者を受け入れているか公表されていませんでした。ですから、当社で感染者が出たときにいろいろお世話になった京都市役所保健福祉部に取り組みを申し出て、各病院に調整いただき実現した経緯がありました。病院だけでなく行政機関にもコロナ関係に付随する業務で送迎需要があると伺い、無料送迎の範囲が広がっていきました。

シエンプレ:今回の支援は京都市役所のお力添えでスタートしたのですね。市役所の方々も、みんなのために無償で尽くしてくださった企業様の心意気に共感されて、自分たちの送迎もお願いされたのでしょう。仕事をお任せしたくなる気持ちがよく分かります。今回は、御社が感謝をカタチにしようと率先して働き掛けられたわけですが、無料送迎を通して生まれた感動的なエピソードなどはありますか。

東様:病院の方々から日々お礼を言っていただき、院内のお知らせなどにも当社の取り組みを載せてくださるなどしてうれしかったですね。私個人としては、社内報のインタビューに担当ドライバーが喜んで応じてくれて、送迎業務に携わることに前向きな気持ちでいてくれたこと。それも、私が所属する京都以外の各都市の社員も含めてみんなが。MKグループとしての一体感、企業理念を体現できたという手応えがあり、広報担当としてただただうれしかったです。

シエンプレ:そうでしたか。コロナ禍で社会全体が殺伐としていた中、各病院の方々もさぞかし心が温まる思いをされたことでしょう。むしろ、あちらが感動されたのかもしれませんね。

東様:医療機関の皆様が通勤に困っていたという状況でしたからね。一般の方々から「公共交通機関に乗らないでくれ」と言われた医療関係者もいらっしゃったようで。

シエンプレ:そうしたニュースをテレビやネットで見聞きしたときは心が痛みました。それにしても、ドライバーの皆様の挙手による稼働というのは素晴らしいですね。本当に勇気を頂きました。

東様:ありがとうございます。

親しみやすさ重視のSNS投稿 「刀剣ツアー」も大成功

シエンプレ:今回の取り組みは内容もさることながら、デジタルコミュニケーションのあり方も高い評価を得られました。御社はどのような方針で、デジタルコミュニケーションの媒体を運用されていますか。

東様:間違った情報を流さないように心掛けています。さまざまな情報を上げさせていただいている中で、例えば場所や名称などを間違わないように。また、否定形や疑問形をなるべく使わず、分かりやすい文章で書くように気を付けていると聞いています。公開する写真もあまりふざけたものは使わず、エムケイタクシーのドライバーらしく親しみが湧くような素材を投稿するようにしていますね。会社のイメージを壊さないようにしています。

シエンプレ:それは大切ですね。炎上対策として、何らかのチェック体制などを敷かれていますか。

東様:特にそういったことはしていませんが、経営企画部の18名のうち6名が各自、担当媒体の責任者として日々情報収集を行っています。他社の炎上事例がネット上に出ていますから、それを共有して意識の向上に努めていますね。みんなで「気をつけようね」と声を掛け合い、意識を高めて対応しています。忙しいときは媒体の枠を超えてサポートし合いながら、全員が当事者として取り組むよう心掛けています。

シエンプレ:なるほど。リサーチすること、他社事例に学ぶことのいずれも大切ですね。従業員が個人でSNSを使う際のリスク対策として、研修などは行っていますか。

東様:SNS利用のマニュアルなどを活用して周知するようにしています。新入社員には2年ほど前から、入社時研修で徹底するよう指導していますね。私どもはタクシー会社ですから、もともと守秘義務に対する意識は高く、一般の方々以上に慎重であることは確かです。「個人的なやり取りだと思っていても必ずバレるよ」という感覚がありますから。

シエンプレ:基礎がしっかりできていらっしゃるのですね。確かに、守秘義務に関してはプロの方々ですものね。これまでの取り組みで、何か自慢できることはありますか。

東様:一時、刀を扱ったゲームが流行ったのですが、京都のさまざまな神社やお寺には由緒ある刀が収められています。私どもはそういった寺社仏閣の方々と懇意にさせていただいているので、「刀剣ツアー」という企画を始めました。
SNSで「興味がありますか」と投げ掛けたところ、思いのほかたくさんの反響をいただき、ゲームのファンの方々からも次々とメッセージが寄せられました。「こんな場所にも行ったらどうでしょうか」というアドバイスも多く、ありがたかったです。実際にエムケイのタクシーでツアーを行ったところ、全国からお客様がお越しくださり、大人気を博しました。このツアーがきっかけで、京都に来て刀剣巡りをするときはエムケイを選ぶ、という方もいらっしゃいました。

シエンプレ:「刀剣ツアー」はテレビで取り上げられていたので拝見しましたが、企画されたのは御社だったのですね。

東様:実はそうなんです。

シエンプレ:しっかりと成果を出していらっしゃるのは、さすがですね。逆にヒヤッとされたことはありますか。

東様:ありましたね。数年前、広告に猫のキャラクターを使ったことがあったんです。空港からの帰り、当社のタクシーにご乗車いただいたご家族をモチーフにしたイラストで、お父さんが寝ている横でぐずっている子どもを、お母さんが「よしよし、もう着くからね」とあやしているシーンでした。
快適に移動しているご家族を描いたつもりでしたが、「お父さんはどうして寝ているだけなんですか」というお問い合わせを頂きまして。猫だから性別はあまり意識していなかったのですが、こういうところで不快感を覚える方がいらっしゃるのだなと学ばせていただきました。

シエンプレ:猫のキャラクターであっても、性別がイメージできるものはご指摘を受けるのですね。私も勉強になりました。

東様:「あっ、これか!」と思いましたね。「自分たちは大丈夫だから」と無意識でいると、いろいろなところに潜んでいる炎上の種を見逃しかねないなと、本当にヒヤッとしました。ただ、非常に早い時期に教訓を学ぶことができたので、アンテナを張ることの大切さを知る勉強になりました。

心をつなぐコミュニケーションで「京都の魅力を伝えたい」

シエンプレ:デジタルコミュニケーションを活発に行っておられる御社が、ベンチマークとされている企業様や個人の方はいらっしゃいますか。

東様:はい。Twitter担当者に聞くと、阪急電鉄様だそうです。振る舞いや発信されている観光情報を非常に参考にさせていただいているようです。

シエンプレ:なるほど。阪急電鉄様も上品で上質なブランドイメージですが、最近は積極的に新しいことに挑戦していらっしゃいますね。

東様:はい。そのバランスが素敵だなと、社内のメンバーも共感しています。

シエンプレ:それでは改めて、理想的なデジタルコミュニケーションとはどのようなものだとお考えですか。

東様:まずは自社を知っていただくためのツールだとは思うのですが、書き込みの内容によってはさまざまな捉え方をされてしまう可能性があります。気を配らなければならないものですが、うまく使えばお互いの心をつなげてくれるものなのかなと思っています。

シエンプレ:それを実践されている方の言葉は響きますね。活用に力を入れていきたいデジタルメディアはありますか。

東様:今まで力を入れていたのはTwitterとインスタグラムでした。Twitterの方は敷居を下げて、多くの方に親しみを感じていただきたいという思いで発信してきました。インスタグラムは京都ファンを増やす、京都観光に行きたくなるようなものを目指して運用しています。桜や紅葉の記事などで京都の観光情報をお伝えするオウンドメディアは、当社を知らずとも京都に関心がある多くの方々の目に留まるようになりましたし、昨年はYouTubeを始めました。

シエンプレ:音声SNSのClubhouseも活用されていますね。

東様:Clubhouseは、日本では恐らく法人として初めてアカウントを取得しました。「京都の魅力を伝えたい」というコンセプトだったらいいねということになり、専任者を決めて少しずつ始めています。ただ、TikTokだけは私たちの守備範囲外だなということになり、手を出していません。歌ったり踊ったりというのはエムケイのイメージと違うなと思いまして。

シエンプレ:なるほど。御社の企業イメージを一言で表現するとしたら、どのようなものですか。

東様:質の高いサービスです。私どもは経営理念で「タクシードライバーの地位向上」を謳っていますが、そのためには親切・丁寧なサービスを追求することでお客様にご満足いただくことが最も重要であると考えています。「身だしなみからきちんとしなさい」という教育の徹底をポリシーとして、引き続き歩んでまいります。

コロナ禍の挑戦で得た経験をお客様に還元

シエンプレ:2020年を振り返り、最も苦労されたことと良かった出来事は何ですか。

東様:2020年は、どうしてもコロナですね。京都はそれまでインバウンドの恩恵もあり、観光需要は右肩上がりでしたが、落ち方もすごい状況です。春になって需要が戻ってくるのかが一番気がかりですね。そうした中で得られた成果は、新しいことにチャレンジする年になったことですかね。例えば、飲食のデリバリーをタクシーで引き受けるという試みも、ある程度の成果が出ています。飲食業界というのはタクシー業界と一蓮托生ですので、向こうがしんどいときはこちらで盛り上げたいと考えました。

シエンプレ:素晴らしいフットワークですね。2021年の目標があれば、お聞かせください。

東様:先日リリースしたのですが、新たに2000名のリクルート採用を行います。タクシードライバーという仕事を選んでくださる方が年々減り、慢性的な人手不足に陥っているのがタクシー業界。A地点からB地点まで人を乗せて運ぶだけという仕事では、若い人に魅力を感じてもらえなくなっているのです。我々はトラベルコーディネーターと呼んでいますが、新卒採用では「観光知識をしっかり学び、中学生や高校生の修学旅行のお供など魅力的な旅のお手伝いをする仕事です」と説明しています。採用面接では、当社のタクシーを利用して修学旅行の思い出をつくったとおっしゃってくださる学生さんも少なくありません。

シエンプレ:SNSの活用などを通して、若いファン層も増えていらっしゃるのでしょうか。

東様:はい。さまざまな発信に対し、多くの反響を頂いていますね。

シエンプレ:読者の皆様にPRされたいことがありましたら、ぜひお聞かせください。

東様:やはり「京都観光に、ぜひいらしてください」ということです。実は昨年11月頃まで、嵐山に来られるお客様が例年より増えたんですよ。それまでは海外に行かれていた方々が、コロナの影響を受けて国内で過ごそうということになられたようです。そのように京都から少し足が遠のいていらっしゃった方々に、京都の魅力をよりお伝えできるよう、私どもも勉強して頑張ってまいります。コロナの感染防止対策もしっかりと行っていますので、ぜひ京都にお越しいただきたいとお伝えいただければありがたいです。

シエンプレ:必ずお伝えいたします。最後に、御社のファンや関係者の方々にメッセージを頂けますか。

東様:コロナ禍を通じて思いを巡らせたのは、私どもにできることは何なのかということ。いろいろな挑戦ができた中で、さまざまな学びもありました。次はこの経験をお客様にお返しできたらと考えていますので、ぜひご批評やご意見などを頂けたらうれしいです。これからもエムケイをよろしくお願いいたします。

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