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自動車保険水増し請求問題に見る炎上時の謝罪対応

公開日:2023.08.25 最終更新日:2023.12.06

企業が不正や不祥事を起こした場合、SNSなどで批判が巻き起こって炎上するのは、もはや常識です。炎上を収束させるためには事実関係の説明と謝罪が求められますが、適切なタイミングや内容を判断しなければ意味がありません。今回は、前代未聞の不正が発覚した中古車販売大手の事例に基づき、炎上時に取るべき謝罪対応を考察します。

2021年秋の内部告発で明るみに

「大切なお客様の車をお預かりして、これから修理する人間が傷を付けて(保険金を)水増し請求する、あり得んですよ。本当に許し難いです」

前代未聞の保険金水増し請求は、怒りをにじませながらこんなコメントを口にした経営トップ(前社長)が率いる中古車販売大手A社で起こりました。

その手口は極めて悪質です。「ゴルフボールを入れた靴下で車体を叩いて凹ませる」「工具のドライバーでボディーを引っかく」「実際はないのに損傷があるかのように見える写真を撮影する」など、まさに手段を選ばずに不正を繰り返していた実態がうかがえます。

さらに、冒頭のコメントがあった2023年7月25日の記者会見で、不正について「天地神明に誓って知らなかった」と経営陣の関与を否定した前社長の証言にも、大きな違和感を覚えた人は多かったでしょう。

A社の社員が損害保険会社に不正を内部告発したのは2021年秋のことです。2022年2月には、損保会社の調査でもそうした行為が確認されています。

2023年1月には、A社が第三者による特別調査委員会を設置。2023年4月には、内部告発に関する週刊誌の記事がXのインフルエンサーに取り上げられ、不正請求問題が拡散しました。

前社長は「知らなかった」と関与を否定

2年近くも前からこれほどの騒ぎになっていながら、「経営陣は知らなかった」と言い張るのは無理があるでしょう。

さらに、2023年7月まで一度も記者会見を開かなかった理由も、多くの人が理解に苦しむ点です。

A社は特別調査委員会の調査報告書の内容を発表した7月18日、前社長が報酬全額を1年間返上するなどの「処分」を明らかにしたものの、メディアの報道姿勢を批判する前社長本人のLINEが流出し、SNS上などで批判を浴びています。

さらに記者会見で、前社長は不正について「各工場長が指示してやったんじゃないか」と発言。最後になって「考え直した」と撤回しましたが、不正に関わった社員を特定して「刑事告訴を含む厳正な対処をしたい」と発言しました。

しかし前社長は、不正に手を染めざるを得なくなるほど社員を追い詰めた企業体質を看過していた自己の責任については何も触れていません。

また、記者会見で涙を流して会社の再建を誓ったはずの新社長は、その当日に社用携帯電話のLINEアカウント削除を社員に指示していたことが分かりました。

社員からも「証拠隠滅としか思えない」との疑惑が続出し、記者会見とその後の対応が事態の収束につながらなかったのは明白と言えます。

さらに、記者会見の後はSNSユーザーの報告などにより、全国複数の店舗前の街路樹が不自然に枯死したことが発覚。その後A社も除草剤の使用を認めたことから、関係する自治体は被害届の提出や損害賠償を求める動きを見せています。

A社に多数の出向者を送り込んでいた損保会社に対しても「本当に被害者なのか?」との疑惑が降りかかるなど、一連の問題をめぐる「炎上」が収束する気配はありません。

国土交通省や金融庁の調査・処分の行方も注目される中、SNSでの内部告発などによって新たな不正が暴かれる事態が十分に考えられます。

沈黙は「一時的な逃避」に過ぎない

改めて振り返ってみれば、A社についてはパワーハラスメントや不正行為のもみ消しなどの疑惑がSNS上でもたびたび持ち上がっていました。

A社はいずれの事案に関しても記者会見、リリースといった対外的な発信は一切していません。反論さえせずに沈黙を貫いてきましたが、今回の成り行きを見れば「一時的な逃避」に過ぎなかったことは一目瞭然でしょう。

確かに、沈黙を貫けばメディア側は報道材料がなく、短期的には批判や炎上から逃れられるかもしれません。

しかし、不正や不祥事の根本原因が解消されたわけではないため、批判が再燃する火種はいつまでもくすぶり続けることになります。不正や不祥事から目を背けていた分、信頼回復には非常に高いハードルを乗り越えなければならないのです。

謝罪に欠かせない「迅速さ」「正確さ」「誠実さ」

また、謝罪対応の基本姿勢として求められるのは「迅速さ」だけではありません。

記者会見などで説明する情報に誤りがないようする「正確さ」が欠かせず、情報が錯綜して事実関係が分からない場合は「現在調査中」という1次コメントを出し、正確な情報を得てから詳細を発表する必要があります。

もちろん、嘘や隠蔽による保身に走らず、正直に事実関係を明らかにする「誠実さ」も不可欠であることは言うまでもありません。

後になって嘘や隠蔽が発覚すると、信頼回復はさらに困難になってしまいます。

その上で、謝罪文に含めるべき基本的な内容は、以下の通りです。

  1. 謝罪
  2. 不祥事の詳細説明
  3. (被害者がいる場合)被害者への補償内容
  4. 原因
  5. 再発防止策
  6. 経営陣の責任について

これらの項目は、事案に応じて適宜変更しても構いません。

例えば「被害者に命の危険がある場合」は「謝罪」より「被害者への対応」を優先するべきで、「被害者が不特定多数・広範囲の場合」も「謝罪」より「情報発信」を適宜行うべきです。

不正や不祥事の対応には、「適切なタイミング」での謝罪や情報発信が求められます。

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