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女性蔑視発言に「NO!」炎上を寄せ付けない企業の情報発信

公開日:2021.04.30 最終更新日:2023.06.16

第一次世界大戦の火ぶたが切られた1914年。ドイツに宣戦布告したばかりのイギリスで、「白い羽根の会」という名の女性組織が誕生しました。
どことなく優雅で穏やかなイメージも抱かせるネーミングですが、一体何のために結成されたのでしょうか?

その目的は、現代で言うジェンダーギャップを助長するものでした。女性たちは市中で軍服を着ていない男性を見つけるや否や白い羽を一方的に差し出し、軍隊に志願するよう説得したのです。いわゆる「白い羽根運動」と呼ばれたキャンペーンでした。
公園で、バスの中で、あるいは散歩の道すがらで、私服姿で外出した男性たちは見ず知らずの女性にいきなり白い羽を押し付けられ、「戦場に行け」と詰め寄られたというわけです。

退役軍人や傷痍軍人、さらにはたまたま私服姿で街を歩いていた現役の軍人にも、容赦なく白い羽根が付き出されたと言います。精神疾患を抱えていた男性が白い羽根を渡されたことを重荷に感じて自殺してしまったという話も残っているほどです。

傍若無人な運動が幅を利かせた状況下。あまりにも露骨なジェンダーギャップが横行していることに苦しみ、憤りを募らせた男性が少なくなかったでしょう。

この運動は、女性の社会進出を目指すフェミニストたちが男性を戦場へ追いやるために主導したとも言われています。
考えてみれば、当時の女性が戦闘員として戦地に送り込まれることはなく、銃後の世界にとどまるのが当たり前でした。そうしたジェンダーの不平等があったからこそ、彼女たちは何の心配もなくこのようなキャンペーンに専念できたと言えるでしょう。

「兵士=男性」は古代から世界中に浸透している性別役割分業の形ですが、そのようなジェンダーの分断に乗じて新たな分断を生んだのが「白い羽根運動」だったというわけです。

もちろん、現代社会では「白い羽根運動」のようなキャンペーンが繰り広げられることなどあり得ないはずです。
しかし残念ながら、ジェンダーギャップそのものは今も解消されたとは言えません。

例えば「兵士」「軍人」という単語を見聞きした際、無意識のうちに男性の姿を思い浮かべる人は多いでしょう。性差の固定概念を取り払うのは、それほど難しいことだと言えます。

新型コロナウイルスの影響もあり、世界中で経済、人種、世代間などの分断と差別が深刻化している今だからこそ、ジェンダー問題には誰もが敏感でなくてはならないのです。

「女性は話が長い」…東京五輪組織委トップが舌禍

東京五輪の組織委員会で会長を務めていたA氏が口にしたのは、ジェンダーフリーを目指す世の中の動きに逆行する発言でした。

2021年2月3日の日本オリンピック委員会(JOC)評議会。A氏は「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。(中略)女性の数を増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制を促しておかないと、なかなか終わらない」とコメントしたのです。

テレビや新聞、インターネットなどのメディアが一斉に「女性蔑視だ」と報じた翌日、A氏は緊急の記者会見を開いて発言を撤回、謝罪します。一方、自ら辞任する考えはないことを強調、「老害が粗大ごみになったと思うなら掃いてもらえば良いんじゃないですか」とも言い放ちました。

この時点で、A氏は「単なる軽口で、大した問題にはならない」と高を括っていたのかもしれません。
事実、国際オリンピック委員会(IOC)も、謝罪会見の直後は「問題が終わったと考えている」とのコメントを発表しています。

しかし、事態を収めたかったはずの謝罪会見は、世の中の批判を一層激しくさせる結果を招きました。
シエンプレの調査によると、A氏の発言に対する2月3日のTwitter投稿数(リツイートも含む)は10万件超。これに対し、謝罪会見を受けた翌日の投稿数は一気に60万件近くまで跳ね上がり、1次炎上を引き起こしたのです。

世間・メディアの反応(投稿件数の推移)

その後も海外のIOC関係者や国内のアスリート、著名人、さらには東京五輪のスポンサー企業までもが批判的な声明を発表し、炎上は2次、3次へと発展。IOCも一転して発言を問題視する姿勢を見せることになります。

A氏が辞任を表明したのは、2月12日のことでした。

企業のメッセージングが問われる時代

女性蔑視発言に端を発した一連の問題に関しては、企業が心得ておくべきいくつかのポイントがあります。
企業経営におけるコンプライアンスとガバナンスの重要性が増していることを考えれば、それらが注目されるのは当然かもしれません。

弊社が検証し、まとめたのは以下の3点です。
1.著名人、企業、団体の情報発信が一定の影響力を持つようになっている。
2.直接炎上に関わっていなくてもスポンサー企業としてコメントを求められるケースが増えている。
3.間接的に炎上に巻き込まれないよう、企業にとって平時からの情報発信が一層重要になっている。

企業が「面倒なことに関わりたくない」とコメントを避ければ、世の中が問題視する事象から目を背けている、あるいは容認していると誤解されかねません。
消費者の支持を得る上では、リアルタイムに世論を把握した上で適切な広報活動を展開しなければならないシーンが増えていくものと予想されます。

女性蔑視発言に反応したスポンサー企業の多くは独自に「人権指針」を規定し、企業としての立場を平時から発信できていました。
過去にジェンダー問題のトラブルを経験した企業もありましたが、毅然とした態度を打ち出したことでネガティブな歴史を掘り返されるのを防ぐ効果もあったというわけです。

謝罪会見の対応を誤り、炎上被害を拡大させてしまった組織委員会では、ジェンダー問題に関する内部告発が続きました。
東京五輪開会式の演出を統括するはずだった男性が発案した差別的プランが流出したのは、A氏の発言から間もなくのこと。内輪の発言が外に漏れた形でしたが、彼もまた辞任に追い込まれたのです。

モニタリングやリスク診断、専門家の多重チェックで炎上防止

こうした事態から、企業はどのように身を守ればいいのでしょうか?

弊社が提供している包括的サポートを活用すれば、専門的な知識を備えた第3者による多重チェックで炎上トラブルを防ぐことができます。
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マーケティングでの起用を予定しているインフルエンサーの評判や過去のSNS投稿などに潜むリスクの有無も診断可能です。

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弊社が運営する国内初の研究機関であるデジタル・クライシス総合研究所では、国内外で発生し続ける最新の炎上事例をくまなく収集・把握し、契約企業への勉強会や研究レポート配信を重ねています。
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