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今こそ考えるべきデジタル・クライシスの話(6)

公開日:2019.11.01 最終更新日:2022.09.13

※この記事は雑誌『美楽』2019年11月号の掲載内容を転載しております。

2019年の夏も厳しい暑さが続きました。消防庁の発表では、8月5日から11日の1週間で1万2751人が熱中症で救急搬送されたそうです。(※1)

各所で熱中症への注意喚起が行われるなか、SNSでは運送業者や建設業者の体調を心配する投稿が散見されました。

その中に10万件以上も「いいね」を集めるツイートがあったので、どのような反響があるのか覗いてみました。すると、返信のほとんどは投稿者の意見に賛同する内容か、あるいは自身も同じような境遇で働いていると嘆くツイートでした。

私が確認した限り、勤務先を公開している投稿はありませんでしたが、「休憩が取れない」「猛暑の中で厳しい肉体労働を強いられる」などの情報とともに社名が公開されれば、デジタル・クライシスに発展していたかもしれません。

確かに、制服を着たまま休憩することをけしからん、と感じた人から苦情が届いたり、休憩によって作業に遅れが発生したり、といった事態は考えられます。
しかし、その結果として従業員に耐え難い負担が及べば、企業のブランドが失墜する事態に発展する恐れがあるのです。

一方で、作業よりも従業員の休憩を優先させる姿勢を顧客に見せることで、企業イメージが向上した例もあります。

歴史的猛暑となった昨年の夏、とある運送会社が「従業員に十分な休憩を取らせたい」という理由で、顧客に荷物の到着を遅らせてもよいか許可を取る連絡をしました。この連絡を受けた人物が一連の出来事をツイッターに投稿したところ、21万件以上の「いいね」を集めたのです。寄せられた反響には「客との約束を反故にするなどけしからん」という意見はほとんど見られませんでした。

事業者は、自社の実態を知った人々がどのような印象を受けるか、改めて意識しなければいけません。しかし、人々の価値観は、時代と技術の変化に伴い目まぐるしく移ろいます。それゆえ、経営判断におけるウェブモニタリングの重要性が日々高まっているのです。

※1 2019年 都道府県別熱中症による救急搬送人員合計搬送人員 前年との比較
https://www.fdma.go.jp/disaster/heatstroke/items/heatstroke_sokuhouti_20190805.pdf

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