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大手飲食店チェーンの炎上から考えるネット上での告発リスクと対策法

公開日:2022.11.01 最終更新日:2023.06.01

※この記事は雑誌『美楽』2022年11月号の掲載内容を転載しております。

2022年7月、全国展開する大手飲食店チェーンAの元従業員が厨房に大量の害虫が発生していたことをSNSに投稿し、炎上する事案が発生しました。元従業員は、店の衛生管理の劣悪さ以外にも、新型コロナ対策適正店認証制度の悪用や給与の未払いなどの問題を次々とツイート。これらの投稿は、まとめサイトなど多くのネットメディアに取り上げられ、世間の大きな話題となりました。 炎上の結果、同社の株価は下落し、告発された店舗も閉店するなど、経済的損失は約12億円以上といわれています。また告発が引き金となり、飲食店チェーンAに対して、本事案とは関係のないネガティブな投稿が増加。新たな炎上がいつ起こってもおかしくはない状況となってしまったのです。

これらのネット上の論調に対し、運営元のB社は公式サイトに謝罪文を掲載。後日、保健所による立ち入り調査の結果を報告し、運営元企業として管理できる部分や、ネット上の論点を押さえた上で、改めて謝罪を行いました。これらの迅速な対応により、徐々に事態は収束に向かいました。

幅広い世代にSNSが普及した昨今、本事案のような「ネット告発」は、スタンダードになっています。ネット上での告発は、本来ならば公にはならなかったかもしれない不正や不祥事が正しく裁かれるきっかけになるというメリットがある一方で、事実とは異なる情報も拡散されてしまうというデメリットもあります。実際、飲食店チェーンAは保健所の立ち入り検査の結果として、「害虫は見つからなかった」と発表している一方で、「保健所もグルではないか」といった荒唐無稽な論調が拡散されてしまったのです。

また今回のネット告発では、運営元企業の管理・監督責任を問う声も多数挙がりました。フランチャイザー(本部)側の監督権は限定的で、実質フランチャイジー(加盟店)固有の問題であるにも関わらず、他の運営体も含めたフランチャイズ店舗全体の問題とされたのです。

このようなネット告発による炎上を防ぐには、炎上の予兆をいち早く察知し、事前に対処できる体制を構築することが重要です。今回、炎上した店舗のグーグルビジネスプロフィールには、以前から衛生面を指摘する複数の書き込みが確認されていました。もしも、これらの投稿を事前に把握し、改善に繋げていく体制があったならば、今回の炎上を回避できた可能性は高いでしょう。

また、告発された内容が事実とは異なる場合は反論し、真実を伝えらえる環境を構築しておくことも大切です。なぜならば、炎上は一過性のものではなく、連続的なものとして捉える必要があるためです。炎上後の対応を誤ることで、その後も「炎上しやすい企業」になりかねません。そして、告発内容や意見を真摯に受け止め、ユーザーに対して、誠実な対応と正直な行動をすること、「Digital Integrity」(※1)を意識することも忘れてはいけません。

※1 Integrity=誠実・正直の意味

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