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「情報が一部切り取られ拡散」品川駅の広告騒動から学ぶ炎上対策

公開日:2022.01.01 最終更新日:2023.06.01

※この記事は雑誌『美楽』2022年1月号の掲載内容を転載しております。

JR品川駅構内のディスプレイ広告が批判を浴び、炎上する事態となりました。長さ約250メートルある、コンコースに44枚設置された大型画面のすべてに映し出されたのは「今日の仕事は、楽しみですか。」というキャッチコピーでした。品川駅は、多くの通勤者が行き交う場所。駅利用者への配慮に欠けると批判が集まり、広告出稿からたった1日で掲載を取り下げる結果となったのです。

問題の広告は、掲載がスタートした、10月4日の通勤時間帯には大きな話題にはなっていませんでした。しかし、広告主である企業のCEOのツイッターをきっかけに、拡散・炎上することとなったのです。4日の11時に投稿されたCEOのツイートには、広告の告知とともにディスプレイの画像が数枚添付されていました。翌日、問題のコピーが写った画像が拡散され始め、「仕事は楽しくないといけないのか」「不愉快」といった批判が集中しました。画像を加工して、パロディを楽しむユーザーも続出するなど、すべての人が否定的だったわけではないものの、広告主である企業は、謝罪とともに10月5日の午前中をもって広告掲載を終了したことを発表しました。

実は、批判されたコピーは、広告全体の一部であり、表示時間は1秒程度。次の画面に切り替わると「今日の仕事が楽しみだと思える仕事が増えたらこの社会はもっと豊かになるはず」という、広告主が最も伝えたかっただろうメッセージが表示されていたのです。CEOのツイートにも、広告の全体像が分かる複数の画像が添付してあったのにも関わらず、問題のコピーのみが独り歩きし、炎上する結果となってしまいました。

このように情報の一部が切り取られ、拡散された例は他にもあります。9月に発足したデジタル庁の会見時、Aデジタル監が「私はデジタルの専門家でもエンジニアでもない」と発言しました。この発言に世間は「知識のない人物を起用したのか」と非難。A氏の発言がネット上で拡散されました。しかし、会見での発言すべてを確認すると、A氏は専門家ではないものの、デジタルの知識、新しい技術を積極的に取り入れる姿勢を持ち、ご自身も切磋琢磨していることがわかります。

品川駅の広告騒動から学ぶべき、炎上対策は2つあります。1つは、受け手側が何を感じるのかを意識したクリエイティブ作成です。品川駅は通勤者が利用する割合が比較的高く、仕事に対するストレスを感じている方や、コロナ禍であっても出勤せざるを得ない方もいたでしょう。その方々がこの広告のコピーを見て、どのような感情を抱くのかを深く思考していたならば、炎上を回避できたはずです。もう1つは、モニタリングを行い、いち早く動向を察知すること。今回は広告主のツイートが拡散のきっかけでしたが、第三者が悪意を持って情報の一部を切り取り、拡散する可能性も大いにあります。事前のチェックを重ねたとしても、炎上状態に陥るリスクは存在するため、いち早く動向を掴み、誤解があるならば、正しいメッセージを早急に発信するなどの対策が必要なのです。

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