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元首相銃撃事件から考える「不謹慎狩り」~インシデントへの備えの重要性

公開日:2022.10.01 最終更新日:2023.05.31

※この記事は雑誌『美楽』2022年10月号の掲載内容を転載しております。

2022年7月8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃を受けて死去するという衝撃的な事件が発生しました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。白昼に群衆の前で銃で撃たれて亡くなるという凄惨な事件に対し、現在も多くのメディアが事件の続報や関連ニュースを報道しています。

銃撃事件発生後、SNSには安倍元首相の死去を嘆く声や事件に関連した投稿が溢れかえりました。また、訃報を受け、多くのインフルエンサーが動画配信などを中止し、民放テレビ各局も番組編成を変更。企業がCMの放送を自粛したため、放送予定だったCMからACジャパンのCMへの切り替えを行いました。

企業がテレビCMを自粛した理由は、「不謹慎狩り」によって世間からの批判を受けることへの懸念です。「不謹慎狩り」とは、災害や世間を揺るがす事件の発生時、企業や著名人の公式アカウントの投稿に対し、その事件とは無関係なのにも関わらず、「不謹慎だ」と揚げ足を取られることによって炎上に至る現象です。実際、今回の銃撃事件に関しても、事件発生から約3日間で14万件以上の「不謹慎」という言葉を用いた投稿がされており(※1)、本来、事件とは関係のない映像やキャッチコピーを批判する投稿が多数確認されています。このような不謹慎狩りにより、企業にとっては想定外といえる炎上が発生してしまうケースがあるのです。

こうした「不謹慎狩り」は、過去にも多数発生しています。2016年の熊本地震の際、笑顔の写真をSNSに投稿した俳優が不謹慎だと批判され、炎上したケースや、寄付した義援金の金額がわかる写真を投稿したタレントが「偽善」「売名」だと批判されたケースがあります。また、「自粛警察(※2)」という概念が新たに明るみになりました。日本の国民的アニメである「サザエさん」で放送された、一家でレジャーに出掛けるエピソードが「コロナ禍に出掛けるなど不謹慎だ」と批判され、話題になった事例もあります。

このような「不謹慎狩り」や「自粛警察」による炎上を回避するには、災害や事件の発生を想定した備えが重要といえるでしょう。まず、重要なのが「SNSの運用ガイドラインの整備」です。事件発生時に公式SNSアカウントはもちろんのこと、個人による不適切な投稿が発生しないよう、雇用形態を問わず、すべての従業員がSNSの利用ルールや運用ポリシーを理解し、責任者がチェックできる体制です。また、緊急時もユーザーは見ているため、「コンテンツの配信停止が迅速に遂行できる体制」を整備しておくことも重要です。各種広告やSNSに配信予定だったコンテンツを停止する判断を迅速にできるよう、情報の共有ルートや連絡先の確認、配信停止をする際の判断基準を明確にしておきましょう。

※1 ソーシャルリスニングツール「Netbase」の自動精査機能を使用
※2 行政による外出や営業などの自粛要請に応じない個人や商店に対して、偏った正義感や嫉妬心、不安感から、私的に取り締まりや攻撃を行う一般市民やその行為

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