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出版社がネット炎上した社員を退職処分 企業とSNSの新たな関係性とは

公開日:2021.11.01 最終更新日:2023.06.15

※この記事は雑誌『美楽』2021年11月号の掲載内容を転載しております。

玩具の販売や模型雑誌Aを刊行する出版社Bが個人のSNSで不適切発言をした社員を「退職処分」にしました。さらに常務取締役や編集長など、同社の監督者3名も降格処分としました。この処分に対し、ネット上では賛否両論が繰り広げられています。

問題となったのは、A編集者の個人のツイッターアカウントでの発言。同社員は、業界ではタブーとされるプラモデルの転売について、問題視している一般ユーザーに対し、転売や買い占めを容認する内容をツイート。「転売を憎んでいる人たちは、買えなかった欲しいキットが高く売られているのが面白くないだけだよね?」「転売されて困るのは一部のユーザーだけってこと」といった、発言の数々に批判が集まりました。炎上した大きな要因は、SNSのプロフィールに自身が勤務する企業名や担当業務を記載していたこと。Bの公式SNSではないものの、同社の社員が発言していることが明確なため、「Bが転売を容認している」と受け取られ、炎上する結果となったのです。

ホビージャパンは炎上後、公式サイトに謝罪文を掲載。「A編集部及びBの見解とは全く異なるものであり、当社はホビーに携わるものとして、ホビー商品のいかなる転売行為や買い占め行為も容認しておりません」という書面を出し、当該社員および、関連役員の懲戒処分を発表しました。この処分に対して、ネットでは「誠意のある対応」と賞賛する声もあれば、「転売に対する個人的見解が炎上しただけで厳しすぎる」といった内容の非難の声もあり、賛否が分かれたのです。

Bの事件と同じように社員が個人のSNSで不適切発言をし、炎上した例があります。1つは出版社Cの事例です。業務委託の編集者がSNSの個人アカウントを使って、テニス選手Dに対し、差別的な投稿を行いました。もう1つは、カードゲームの開発を手掛けるEの事例です。同社の開発ディレクターが自身のSNSに個人への誹謗中傷を投稿し、非難を浴びました。両企業はBと同様に、当該人物に対する契約解除など重い処分を下しました。

今後、社員が個人のSNSで炎上した場合、厳格な処分を行うことが新たなスタンダードになると予想されます。なぜならば、処分を行なわなければ、企業が批判される可能性があるからです。実際、バイトテロが発生し、全店舗を休業させて研修を行った企業と行わなかった企業が比較され、後者が批判されるケースも見受けられます。一方で、厳格な処分をされた社員からは「不当処分」として争われる可能性もあるため、社内処分は慎重に行う必要があります。

もはや「社員のSNSはプライベートだから」という言い逃れが出来ない時代です。個人のSNSであっても、企業名や担当業務を記載している以上、発言には責任が伴うのです。そして、不適切な発言をし、会社に損害を与えた場合、退職処分など重い処遇を課せられる可能性があります。我々ユーザーは、SNSの特性を理解し、適切に利用していくことが求められているのです。

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