ホーム > 大手居酒屋チェーンの異物混入事件から学ぶ 炎上時の初動対応の重要性

大手居酒屋チェーンの異物混入事件から学ぶ 炎上時の初動対応の重要性

公開日:2022.03.01 最終更新日:2023.06.01

※この記事は雑誌『美楽』2022年3月号の掲載内容を転載しております。

2021年11月、大手居酒屋チェーンAの料理に大量の虫が混入していたとして、炎上する事態が発生しました。炎上のきっかけは、店舗を利用した女性のツイートでした。「もつ鍋を頼んだら、1000匹くらい虫が入っていた」というツイートには、料理の画像も添付されていました。ツイートの続きには、店側の場当たり的な対応も記載。添付された画像がショッキングだったことに加え、不誠実ともとれる店の対応に批判が集中する結果となったのです。女性が被害を投稿した翌日には「大量の虫混入」というワードがツイッターでトレンド入りし、世間の話題となりました。

トラブル発生時、店長は不在だったため、現場の従業員が電話で店長からの指示を仰ぎながら対応をしていました。当初、店側はデザートの無料サービスを提案。しかし、同じ厨房で作られた料理は不要だと伝えると、一部の料理の割引を提案されました。納得できない客に「本部に連絡する」と言われた途端に全額無料にするなど、店の対応は二転三転。客は強い憤りを感じ、SNSに不満を投稿したと推測できます。

本案件で注目すべき点は、客への対応だけではありません。店側から居酒屋チェーンAの経営元である株式会社Bへの報告が一切なかったことも問題といえるでしょう。速やかに本部に報告をするルールが徹底されておらず、本部は「お客様相談窓口」に宛てられた被害者からのメールではじめて今回のトラブルを認識したのです。トラブルを知った同社は、保健所の要請に従い、原因究明に向けた調査を実施。被害者とコンタクトを取り、健康上の問題がないかの確認を行いました。そして、事件発生の2日後には、メディアに向けてリリースを出し、事実として認めた上で謝罪。本部による速やかな対応により、事態は収束していきました。

一方で、同じ異物混入の事例でも事態の収束まで時間がかかったケースも存在しています。2020年には、プロテイン食品に虫が混入した、C社の事例があります。本事例もメディアに向けて、販売会社が謝罪文をリリースしましたが、その内容は、自社には責任が無いように捉えられかねないものでした。この謝罪文がさらなる炎上の火種となり、販売会社に対する不信感を訴える投稿が増加。再度謝罪文を掲載するなど、炎上の収束まで長期化したのです。

このように、炎上の沈静化には、迅速かつ適切な初動対応が重要です。初動対応が後手に回ることや場当たり的な対応が要因となり、炎上に発展するリスクが高まるのです。また迅速な初動対応のためには、本部が事態をいち早く認識する必要があります。そのためには、トラブル発生時の報告フローの徹底など、現場向けの教育や研修、各種マニュアルの整備を進め、本部の危機管理体制を現場に浸透させていくことが必要不可欠といえるでしょう。

最新記事の更新情報や、リスクマネジメントに役立つ
各種情報が定期的にほしい方はこちら

記事一覧へもどる