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ロシアのウクライナ侵攻におけるフェイクニュースの現状~真偽を見抜くには

公開日:2022.05.01 最終更新日:2023.05.31

※この記事は雑誌『美楽』2022年5月号の掲載内容を転載しております。

2022年2月24日、ヨーロッパ東部の国であるウクライナに対し、隣国のロシアが軍事侵攻に踏み切りました。国際秩序の根幹を揺るがすロシアの行為に対して、深い悲しみと怒り、そして大きな不安が世界中で広がっています。

ロシアのウクライナ侵攻が深刻化すると同時に、問題視されているのが「フェイクニュース」の存在です。ツイッターなどのSNSを中心としたインターネット上に根拠不明な動画や画像が氾濫し、拡散されているのです。フェイクニュースの一例を挙げると、ロシアのメディアが「ウクライナがドルジバ・パイプライン(※1)を爆破した」と報じた例があります。しかし、実際に爆発が起きたのは全く別のパイプラインであり、爆発の原因は軍の攻撃ではなく事故。さらにニュースのサムネイル画像(※2)は、2014年に起きた無関係の爆発事故のものでした。この他にも、戦闘シーンや侵攻に困惑する住民たちの様子を映したフェイク動画や画像も多数出回っており、データ解析からロシア側の自作自演である可能性が高いものも複数発見されています。このように、フェイクニュースのなかには、政治的意図によって戦略的に流されているものも存在するのです。陰謀論ともいえるフェイクニュースの拡散を目的としたツイッターアカウントも増えており、親ロシア派のプロパガンダ(※3)を拡散するアカウントは、2021年12月から1ヶ月でおよそ12倍に急増しています。

政治的意図はなくとも、誰でも簡単に精度の高いフェイク動画や画像を作れてしまう今の時代。緻密に作られたフェイクを見抜くことは難しく、一般ユーザーはもちろん、メディアや著名人も気付かぬうちに偽情報や誤情報の拡散に加担しているケースもあります。偽情報、誤情報の拡散は情報の混乱を招き、ウクライナ情勢の悪化に影響を与えざるを得ないといえるでしょう。

こうしたフェイクニュースを見抜くために、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が提唱する方法があります。それは、「ただ1人の専門家」を信じてしまうのではなく、専門家を「群れ」でウォッチしていくというものです。例えば、ツイッターを情報源とするならば、「専門家同士の繋がりがある」「他の専門家へのリスペクトがある」「専門用語を丁寧に使用している」という3点を満たした複数の専門家のアカウントをピックアップし、リストを作成します。真偽が定かではない情報があったとして、その情報を専門家たちが共有、認識していないのであれば、フェイクである可能性が高いでしょう。専門家たちだけでなく、公的な専門機関やその分野で権威のあるメディアをリストに加えることで、さらに情報を精査できるはずです。

社会的不安が広がるとフェイクニュースは増加します。事実とは異なる情報であっても、拡散により、あっという間に何千何万という世界中のユーザーの目に止まってしまうのが現状です。企業であれば、株価や商品イメージの失墜に繋がるでしょう。こうしたフェイクニュースから企業や商品自体はもちろんのこと、従業員や消費者をいかに守っていくかが重要といえます。

※1 世界最長の石油パイプライン
※2 概要をおおまかに把握するために設定された縮小画像のこと
※3 意図をもって、特定の主義や思想に誘導する宣伝戦略のこと

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